
「お米とバナナの除菌ウエットティッシュ」
今回の「おこめとSDGs」はおこめ+規格外バナナを利用した天然由来成分99%のウェットティッシュを開発したANAグループの全日空商事の担当者の方に話を聞きます。
全日空商事の100%出資会社・ANAフーズでは南米エクアドルの「田辺農園」とバナナの供給契約を結んでいます。この地で生まれるバナナの中には、輸送などの際どうしても規格外バナナ(未利用資源)が発生してしまうそうです。すでに肥料などに転じるリサイクルを行っていたものの、「田辺農園」のバナナブランドを活かした、別の何かができないかと模索していたそうです。
そんな中、オーガニック米を原料にエタノールを精製し、未利用資源を再生・循環させる取り組みを行う企業・ファーメンステーションと出会い、前述の未利用バナナと、おこめ由来のエタノールを配合した商品「お米とバナナの除菌ウエットティッシュ」を製造するに至ったとのこと。もちろん、全日空商事のSDGs推進の取り組みの一つと言って良いようです。今回は、この有意義な取り組みの中身についてじっくり迫っていきます。
どうしても出てしまう規格外バナナをなんとかできないか…
冒頭でも触れた通り、そもそも「お米とバナナの除菌ウエットティッシュ」の開発に至った最初の発想は「規格外バナナ」を、それまでの肥料・飼料への転換などだけでなく、別の何かにも昇華させることができないかとして始まったものだったそうです。
「ANAフーズが年間約1.4千トンを輸入しているエクアドル産『田辺農園』は、もともと『バナナの栄養でバナナを育てる』『自園で堆肥(たいひ)を作り、化学肥料や除草剤を使用しない』という循環農法で、自然にやさしい栽培方法を採用していました。
一房一房丁寧に育てられているバナナですが、輸入量のうち約0.5〜1%程度が輸送中に傷などがつき、通常価格では販売できない規格外品が発生していました。これらは肥料・飼料などにリサイクルしていたものの、別の方法で活用できないかと模索していました」(全日空商事・担当者)

エクアドルにある「田辺農園」自慢のバナナ園

自然にやさしい栽培方法を実施し、バナナの洗浄に使う水は「人が飲める」綺麗な水を使う「田辺農園」
「おこめからエタノールを抽出する」ファーメンステーションとの協業を実施!
そんな中で出会ったのが、オーガニック米を原料にエタノールを精製し、未利用資源を再生・循環させる取り組みを行う企業・ファーメンステーション。
同社では、近年おこめの消費量が減少し、増加した休耕田を復活させ、オーガニック米を栽培。そのおこめからエタノールを抽出し、化粧品・アロマ製品などの様々な原料に転じる取り組みを行っており、全日空商事はこの点に強く共感。同社との協業を実施し「お米とバナナの除菌ウエットティッシュ」開発に至ったそうです。
「ANAホールディングスの担当者より、ファーメンステーションさまをご紹介いただきました。ファーメンステーションさま独自の取り組み(独自の発酵技術での『循環型社会』の構築)をうかがい、共感し協業させていただきました。
ファーメンステーションさまからは、環境に配慮し栽培されたエクアドル産の『田辺農園』バナナに共感をいただきました」(全日空商事・担当者)
この協業により、おこめだけでなく、規格外バナナからもエタノールを抽出し、双方を原料とする「お米とバナナの除菌ウエットティッシュ」を完成させたそうです。
「まず、ファーメンステーションさまのおこめ由来のエタノールは、JAS有機認証も取得している無農薬栽培したおこめが由来です。さらに産地・生産者さんの由来がわかる原材料から作るトレーサブルな100%国産のバイオエタノールであり、独自の技術によってお米の香りがほのかにし、まろやかなテクスチャーを持つエタノールです。
この抽出技術を規格外バナナにも応用させ、高品質のエタノールを精製。バナナ、おこめ双方からのエタノールを使用した『お米とバナナの除菌ウエットティッシュ』の製品化を実現しました」(全日空商事・担当者)

「お米とバナナの除菌ウエットティッシュ」ができるまでのフロー
おこめ・バナナ他の農作物から抽出したエタノールが、未利用資源のアップサイクルに
そもそもエタノールは活用範囲の広い原料で、ウェットティッシュはもちろん、ハンドスプレーやアルコールスプレーといった衛生用品、またアロマスプレーやディフューザーといったライフスタイル雑貨、各種化粧品にも使われるものです。おこめやバナナはもちろん、様々な農作物から抽出したエタノールが、各製品に転じられることで未利用資源のアップサイクル・有効活用にもつながります。
「未利用資源を活用して、アップサイクル商品に生まれ変わらせることは、他の商材や事業にも応用できる事例です。見過ごされている商品等を改めて見直し、付加価値のあるものに変えていく思考を持つことで、ムダの削減や新たな価値の創造につながると考えています」(全日空商事・担当者)

ファーメンステーションによる循環型モデル
「お米とバナナの除菌ウエットティッシュ」は、全日空商事グループの意義ある一歩だった!
このようにして誕生した「お米とバナナの除菌ウエットティッシュ」ですが、筆者も使ってみました。製品そのものも使いやすく、肌触りも良いものでした。ここまでに紹介した通り、このクオリティにして環境にも良いわけで、まさにSDGsの理想的なカタチの一つのように思いました。

「お米とバナナの除菌ウエットティッシュ」のパッケージを開けます

ウェットティッシュを取り出します

肌触りも良く、柔軟で優しい風合いです
「『お米とバナナの除菌ウエットティッシュ』は全日空商事グループ会社が連携した取り組みでもありました。取りまとめ=全日空商事、原料提供=ANAフーズ、卸し販売=藤二誠、小売り=ANA FESTAといったもので、新たな価値の創造を形にするために、組織間の枠を超えた業務連携を実現できたことも良かったと思っています。
『お米とバナナの除菌ウエットティッシュ』の実現を皮切りに、今後当社の様々な事業部で、社員一人ひとりが、既成概念にとらわれないチャレンジを実行していく機運が高まることを期待しています」(全日空商事・担当者)

全日空商事グループとしても意義のある取り組みだった「お米とバナナの除菌ウエットティッシュ」
気になる「お米とバナナの除菌ウエットティッシュ」ですが、全国の空港売店ANA FESTAおよびサービスエリアなどで購入することができます。サステナブルで意欲的商品でもある「お米とバナナの除菌ウエットティッシュ」、本記事のヒストリーをご参考に是非お使いください!
音楽事務所、出版社勤務などを経て2001年よりフリーランス。2003年に編集プロダクション・decoを設立。出版物(雑誌・書籍)、WEBメディアなど多くの媒体の編集・執筆にたずさわる。エンタメ、音楽、カルチャー、 乗り物、飲食、料理、企業・商品の変遷、台湾などに詳しい。台湾に関する著書に『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)、 『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『台湾迷路案内』(オークラ出版)などがある