地球は、おかわりできません……無石米、無洗米など、60年にわたり「おこめ」にまつわる健康・環境に貢献し続ける東洋ライスのSDGsとは!?

地球は、おかわりできません……無石米、無洗米など、60年にわたり「おこめ」にまつわる健康・環境に貢献し続ける東洋ライスのSDGsとは!?

「SDGs」という概念、言葉がないはるか昔から「おこめ」にまつわる健康・環境への配慮をし続ける東洋ライスの取り組みを、代表取締役の雜賀慶二さんのお話からご紹介します。


東洋ライスが目指す「持続可能な社会の実現」への取り組みは、なんと60年前から実施していたとのこと

2021年11月16日、環境省とエコファースト推進協議会は「第6回エコ・ファースト シンポジウム」というものを実施しました。気候危機と脱炭素社会をテーマにしたもので、これら様々な環境問題とビジネスとをどう結びつけていくかの情報を共有するものでした。この中で、エコ・ファースト推進協議会の加盟企業として、東洋ライス・代表取締役の雜賀慶二さんも参加され、60年にわたって実施し続ける同社の環境への取り組みを解説されました。
東洋ライスは2019年に、日本企業としては初めてSDGsの貢献活動を国連で発表したことでもよく知られており、雜賀さんの解説への注目度は特に高いものでした。今回は、このシンポジウムでの雜賀さんの解説をご紹介いたします。

東洋ライス株式会社・代表取締役、雜賀慶二さん。東京農業大学の客員教授、一般社団法人 日本SDGs協会の名誉会長も兼任されています

60年以上前、「おこめ」には石が混じっていた!?

雜賀さんは、祖父が1916年に設立した精米機の販売・修理業社・雜賀商会の手伝いを行い、1961年に「石抜き機」という革命的な機械を発明しました。
今では考えられないことですが、60年以上前の「おこめ」には石が混じることが多かったようです。精米の際、おこめと石を振り分ける機械がなかったためで、炊き上がったご飯をかじると、石を噛んでしまうこともあったそうです。
精米機の修理などで米穀店に出入りしていたこともあり、日々、多くの苦情が来ていたことを知っていたため、雜賀さんはこれに応えるようにまず「石抜き機」という機械を60年前の1961年に開発。この機械が日本中に浸透することでおこめに石が混じることがなくなり、「日本の米食を変えた」とも言われています。
これを機に、東洋精米機製作所(現在の東洋ライスの前身)を設立。この「石抜き機」を原点とし、以降人々の健康・環境に寄与するような取り組みを行っていくようになります。

「昨今、盛んに『カーボンニュートラル』という言葉がよく使われるようになりましたが、私どもがこれまでに行ってきたことは、『こういう未来を予想して行った』ということではなく、必然的に『こうあるべきや』という考えから行ってきたことです。

約60年前に開発した『石抜き機』によって、以降のおこめは全て無石米になりました。ご飯を食べてて石をバリッて噛んだことないでしょう。それは私の60年前の発明があったからで、その発明が今も脈々と世の中で活動してるということです。

『国がこんなこと言い出したから、こうしようか』とかということではありません。ただ社会が必要としていること、しかも世の中の誰も手掛けていないことを我々はやってきました」(雜賀さん)

左は、1962年当時の「石抜き機」生産風景。右はその1号機となった「トーヨー撰殻機(せんこくき)」

東洋ライスが先駆けた「無洗米」の環境への貢献とは!?

「石抜き機」の誕生から25年後の1976年、雜賀さんは奥さまと淡路島に旅行に出掛けた際、驚愕の風景を目にしたそうです。

「20年ぶりに家内と淡路島へ渡った際に、物すごく海が汚染してることに驚いたんですよ。我々が子どもの頃は『海の絵を描け』と言われたら水色に色を塗ったものですが、淡路島までの道中の紀淡海峡の海を見ると、暗黄緑色に近かった。こんな短期間に海の色が変わるんであれば、我々の子孫は、『海の色を何色に塗るんかな』という恐怖を抱きました。この汚染にはこめのとぎ汁も一因になっているわけですが、そこで『何とかせな』と思ったのが、無洗米開発の発端でした」(雜賀さん)

無洗米はとぎ汁を出さないため、環境負荷が少ないものです。おこめのとぎ汁に含まれる糠にはリンや窒素が多く含まれます。それらはメリットもある一方、「排水」の面から見ればデメリットも多く特に川や海での水質汚濁の原因物質とされる有機物、窒素、リンの3要素が多く含まれるため、雜賀さんはなんとしてでも、このとぎ汁を出さずにおいしいおこめを提供することができないかと考えられたそうです。

「とぎ汁として流れる『白く濁っている』糠の部分には栄養分が多いんです。特にリンが物すごく多いのですが、これがドーンと川や海に流れるとですね、大量の植物性プランクトンが死滅してしまう。しかも、リンというのは下水処理場でもなかなか取りにくい。今、東京都は毎年一千億円とかのすごいお金をかけてリンを取ってますが、それでも、半分しか取れないそうです。結局、リンの半分は川や海に流れてしまうわけです」(雜賀さん)

このとぎ汁を出さないように雜賀さんが開発したのが1991年に誕生した無洗米でした。精米の時点で粘着性のある肌糠を取り除くことで、環境に優しく節水にもつながる、扱いやすいおこめになりました。

「無洗米が新聞に初めて載ったときは『多忙な主婦に朗報!』といった見出しで、『洗わないで食べられる』ことばかりが宣伝されました。その最後のほうにちょこっと『環境にも良いらしい』といった感じで、私はものすごく残念でした。我々の思いは逆で『環境に良いおこめ』として開発し、『洗わなくて楽にする』ということが主体ではありませんでした」(雜賀さん)

2018年に開催された「無洗米未来サミット」での「無洗米宣言」の記念撮影。右端が雜賀さん

SDGsは出費を増やしてまで取り組むものではない!

さらに東洋ライスでは、2005年に無洗米に「健康」を付加させた金芽米というおこめも開発します。これは栄養価の高い胚芽の基底部、美味しく栄養機能に優れた亜糊粉層は残しつつ、糠層だけを丁寧に除去したおこめで、食味も良く健康にも良い画期的なものでした。金色に見える胚芽の一部分を「金芽」と名付けたそうです。

「金芽米を、3企業の約600人ほどが、1年食べ続けたところ、医療費が約半減しました。これはデータとして実証されていますが、この金芽米というのはそれだけ健康面での効果があるおこめになりました」(雜賀さん)

2005年に開発した金芽米(右)と、2015年に開発した金芽ロウカット玄米(左)

ここまでの東洋ライスの取り組みが、健康・環境双方に対して多大な貢献をしていることは言うに及びません。雜賀さんによれば、こういった功績からSDGsに関しての相談もよく受けるのだそうです。

「私は日本SDGs協会の名誉会長をやっていので、よく相談も受けるんだけども、結構世の中の人はね、『SDGsごっこ』をやってるんですよ。『みんなやってるから、うちも何かせんといかんなー』とかね。でも、そうじゃないんやと。

そこで言いたいことは、やはりSDGsは行政が市民、消費者、企業に対してきちんと説明をしないといけない。『こういうことを行うと、それが皆さんのSDGs活動になるんですよ』ということをきっちり説明してやらないといけないと思います。

企業にとっては、『出費を増やしながらSDGsをやる』という必要はないはずです。企業ごとの業態の中で、SDGsの活動を行い、人々の健康や環境に配慮した社会貢献を最優先にしながら、ひいては企業活動にもなるように取り組むのが良いのではないでしょうか」(雜賀さん)

2019年、スイスの国連欧州本部で事業内容を発表した雜賀さん

東洋ライスがあらゆる業態にさきがけて、60年前から取り組んできた環境への配慮は、まさにそのまま「SDGsの先駆的取り組み」だったと言えるように思いました。特に印象的だったのは、「出費を増やしてまでSDGsをやる必要はない」といったところ。これまでの社会貢献と併せて、企業人としてのスピリッツを併せもった雜賀さんにしか言えないものだと思いました。

この記事のライター

音楽事務所、出版社勤務などを経て2001年よりフリーランス。2003年に編集プロダクション・decoを設立。出版物(雑誌・書籍)、WEBメディアなど多くの媒体の編集・執筆にたずさわる。エンタメ、音楽、カルチャー、 乗り物、飲食、料理、企業・商品の変遷、台湾などに詳しい。台湾に関する著書に『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)、 『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『台湾迷路案内』(オークラ出版)などがある

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