佐賀市が取り組む“おこめとSDGs“「シギの恩返し米」とは何か?

佐賀市が取り組む“おこめとSDGs“「シギの恩返し米」とは何か?

今回は佐賀市とWWFジャパン、AKOMEYA TOKYOを運営するサザビーリーグがともに取り組むまさにSDGs的取り組み「シギの恩返し米」のお話です。


自然環境豊かな佐賀・東よか干潟。シギ・チドリが日本で最も多く渡来する地域です

佐賀・東よか干潟。ラムサール条約湿地に登録された自然環境豊かな地域で、日本で最も多くシギ・チドリが多く渡来することで知られています。
この豊かな環境を保ち、未来につながる持続可能な循環型農業への取り組みとして、シギの恩返し米プロジェクト推進協議会・WWFジャパン・AKOMEYA TOKYOを運営するサザビーリーグの3団体によって、生物多様性に配慮した米作りプロジェクト「シギの恩返し米プロジェクト」が発足しました。

シギの恩返し米

まさに“お米目線のSDGs”といって良い取り組みですが、その中身はどんなものなのでしょうか。今回は佐賀市東与賀支所 総務・地域振興グループ 原口謙一郎さんに話をお聞きしました。

小学生にプロジェクトを説明する
佐賀市東与賀支所 総務・地域振興グループ 原口謙一郎さん

20年前から環境に配慮したお米を作ってきたものの…

――まず、佐賀市における「シギの恩返し米プロジェクト」についてご説明ください。

原口謙一郎さん(以下、原口) 2015年に佐賀市内の東よか干潟がラムサール条約湿地に登録されたことを契機に、この湿地の恵みを守りながら、社会活動を行っていきたいというワイズコースへの思いと、佐賀のブランド米を作っていくことを目的に、2017年に協議会が立ち上がりました。

東よか干潟のすぐそばの田んぼではもともと夢しずくというお米が生産されていました。これは特別栽培米というもので、慣行栽培よりも化学肥料と化学農薬を50%以上削減したもので、これは20年以上前から続けてきた栽培方法でした。

ただし、特別栽培米に熱心に取り組んできた一方、農家さんのアドバンテージは非常に少なかったという問題がありました。科学肥料を減らしたり、農薬の回数を減らすことは環境面で意義がある一方で、収穫量はどうしても少なくなる問題があり、その分、お米を商品化する際には付加価値をつけなければ農家さんに還元することができません。例えば夢しずくのようなお米の場合、60キロあたりにして数十円しか農家さんに還元することができないといった問題がありました。「こんなに薄利なら、いっそ特別栽培米をヤメたほうが良いのではないか」といった意見もあったほどです。

そんな問題を抱えていたのですが、ラムサール条約に登録されたことを契機に、農家さんの所得向上につながるように、改めて環境面に優れたお米をブランド化すべく立ち上がったのが前述の協議会だったというわけです。

難儀した「シギの恩返し米」のブランド化

――そこで持ち上がったのが、東よか干潟に渡来するというシギ・チドリに由来するものだったというわけですね。

原口 はい。シギ・チドリ類は、越冬したり中継地として日本に渡来するのですが、最も多く渡来するのが東よか干潟です。WWFジャパンさんにも調査をしていただきましたが、シギ・チドリだけでなく、絶滅危惧種に指定されている魚なども地域で複数発見され、シチメンソウという塩生植物を地域で保全しています。

これだけ環境面が優れているのは、古くから科学肥料や科学農薬を減らした農業を続けた効果であると考え、これ自体をお米の付加価値にしたいと思い、取り組みを始めたという経緯があります。

協議会では「生き物を育む環境づくり」「環境循環・環境保全型農業の推進」「安全安心で持続可能な米づくり」「IT農業導入による米づくり」「地域での環境保全や啓発活動」「流通販売の研究」といった6つの活動方針を掲げました。しかし、最初は「お米のブランド化」と言っても、何をどうやれば良いのか全くわからず、苦労もしました。

「シギの恩返し米プロジェクト」の6つの活動方針

「シギの恩返し米プロジェクト」のイメージマップ

ブランド米生産の名人を増やす!

――どういった面で苦労されましたか?

原口 環境に良い取り組みを行っていても、「どんな点に対し消費者の方が評価してお米を買っていただけるのか」といったことがわかりませんでした。これがわからないと、「お米のブランド化」には至らず、前述のような農家さんへの還元にも繋がりません。このため、各地で「お米のブランド化」を実現している地域に視察に出向いたりして手探りをし続けました。前述の6つの活動方針による「シギの恩返し米」というコンセプトが少しづつ評価されはじめ、今年からさらに本格的にWWFジャパン・AKOMEYA TOKYOとのSDGsに関連した商品開発が立ち上がったという次第です。

「シギの恩返し米」の品種は前述の夢しずくですが、東与賀では、それまでの特別栽培米からさらに環境面に優れた有機質の肥料などを使ったものにし、農薬を当地比7~10割削減しています。

合わせて、ブランド化したお米の需要と供給バランスも精査しつつ、地域の農家さんには生産者全員で生育調査を行うことで、このブランド米の生産の名人を増やしていくという取り組みを現在進行形で行っています。

「シギの恩返し米」田植えの様子

「シギの恩返し米」稲刈りの様子

「シギの恩返し米プロジェクト」はSDGsの7項目を達成している!?

――よく各地域の農家さんからは「後継者がいない」といった悩みをお聞きします。「シギの恩返し米」に関わる地域ではいかがでしょうか。

原口 佐賀の農家さんもそういう問題を多く抱えていらっしゃいます。しかし、「シギの恩返し米」をスタートさせる際は1名だった生産者が、現在は12名になり、面積も拡大していっています。そ「シギの恩返し米」を通して、次代を担う農家へ稼げる農業を継承していくことも、このプロジェクトの目指すところです。

――ここまでのお話では、SDGsの項目のうち、複数のゴールに向けての取り組みのように感じます。

原口 SDGsでは17の目標がありますが、すでに7項目は「シギの恩返し米」で達成できていると自負しています。もともと東与賀自体がSDGsへの取り組みに熱心だったこともありますが、特に「シギの恩返し米」に関しては、プロジェクトに参加してくださっているWWFジャパンさんや、AKOMEYA TOKYOを運営するサザビーリーグさんのお力添えもあってこそだと思っています。

環境を保つために海岸の清掃活動なども行っています

今年3月には「シギの恩返し米プロジェクト」が「未来につながる持続可能な農業推進コンクール」で九州農政局長賞を受賞しました

見た目も味も良い「シギの恩返し米」

――肝心の「シギの恩返し米」はどんな味なのでしょうか?

原口 まず、ツヤツヤ、キラキラとした外見に高評価をいただくことが多いのですが、夢しずく本来が持つモチモチした味、程よい甘さなどが特徴です。食味鑑定地を分析委託しておりますが、1年目に採れた「シギの恩返し米」からいきなり92点という高得点を出しました。おおむね「80点以上が美味しいお米である」とされる中で、「92点」というのはなかなかないと思います。東京の老舗のお米屋さんなどでも高く評価していただいています。

「シギの恩返し米」の3合瓶詰と真空2合パック

机上ではなくリアルを大切に、以降5年間を3団体で取り組む!

――協議会がスタートして5年経ち、今年から3団体連携によるプロジェクトがスタートし、今後さらに5年をメドに展開されていくと聞いています。どんな展望を抱いていらっしゃいますか?

原口 シギの恩返し米プロジェクト推進協議会・WWFジャパン・AKOMEYA TOKYOを運営するサザビーリーグの3団体によって、SDGsに配慮した生産を行いながら、販売の出口までを確保してやっていこうという取り組みを考えています。

やはり私たちのような行政マンが机上で考えるだけでなく、消費者の方々の意見、農家さんが現場で感じていることを生産や商品開発に反映していくことが一番大切なことだろうと思います。今後もこの取り組みと、「シギの恩返し米」を多くの人に知っていただき、佐賀の地域ブランド米として確立していければ良いなと考えています。

「シギの恩返し米プロジェクト」のさらなる展開に期待大!

現在進行系であり、常により良い取り組みを模索する「シギの恩返し米プロジェクト」は、ある意味でSDGsの模範的な姿勢のようにも思いました。原口さんのお話を通し、改めて環境と食(米)についての思いを改めさせられたように思いました。

この記事のライター

音楽事務所、出版社勤務などを経て2001年よりフリーランス。2003年に編集プロダクション・decoを設立。出版物(雑誌・書籍)、WEBメディアなど多くの媒体の編集・執筆にたずさわる。エンタメ、音楽、カルチャー、 乗り物、飲食、料理、企業・商品の変遷、台湾などに詳しい。台湾に関する著書に『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)、 『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『台湾迷路案内』(オークラ出版)などがある

関連する投稿


【AKOMEYA TOKYO】11月19日(金)より、「福で彩るお正月」フェアを開催!

【AKOMEYA TOKYO】11月19日(金)より、「福で彩るお正月」フェアを開催!

今年一年を総括し、来年も豊かな年でありますようにと願うお正月。AKOMEYA TOKYOでは、五色に彩った日本のお正月にぴったりのおめでたいアイテムや、お正月の食卓に欠かせない食品や食雑貨、ご挨拶に使いたいお年賀アイテムなど多数取り揃え、11月19日(金)より、「福で彩るお正月」フェアを開催します!


おにぎりで世界を変える 「おにぎりアクション2021」1ヶ月で27万枚超の写真投稿が集まり、約140万食の給食を世界の子どもたちに届ける

おにぎりで世界を変える 「おにぎりアクション2021」1ヶ月で27万枚超の写真投稿が集まり、約140万食の給食を世界の子どもたちに届ける

日本発、世界の食料問題の解決に取り組む、特定非営利活動法人TABLE FOR TWO International(以下、TFT)は、国連が定めた10月16日「世界食料デー」(世界中の人が食べ物や食料問題について考える日)を記念し、「おにぎりアクション2021」を本年10月5日(火)から11月5日(金)まで開催しました。 キャンペーン期間中に合計27万3,876枚、1日あたり約8,500枚以上のおにぎりの写真が投稿され、その結果およそ7,000人の子どもたちに1年分の給食(合計約140万食分)(注1)をアフリカ・アジアの子どもたちに届けることができました!


【お米クイズ】第162回:ゆめぴりかの昔の名前

【お米クイズ】第162回:ゆめぴりかの昔の名前

「これは知ってほしい!」五ツ星お米マイスター・小池 理雄が、皆さんへお米のトリビアを毎回楽しくお届けする「お米クイズ」。 第162回はゆめぴりかの昔の名前についてです。


六本木ヒルズの試みと、鳥取県で30年もの歳月をかけて作られたお米・星空舞

六本木ヒルズの試みと、鳥取県で30年もの歳月をかけて作られたお米・星空舞

今回は「おこめとSDGs」には一見なんの関係もなさそうな六本木ヒルズの試みと、他県に比べSDGsに特に熱心な鳥取県のブランド米・星空舞のお話です!


「AKOMEYA TOKYO」と「ISHII SHOKUHIN 365」が共同開発。旬の食材を使用した栗ごはんの素を発売

「AKOMEYA TOKYO」と「ISHII SHOKUHIN 365」が共同開発。旬の食材を使用した栗ごはんの素を発売

無添加調理※で商品作りを進めている石井食品株式会社は、お米に焦点を当てたライフスタイルショップ「AKOMEYA TOKYO」と、毎日の食卓に日本の地域と旬をテーマにした上質な食品をお届けする石井食品のブランド「ISHII SHOKUHIN 365」で、厳選した旬の食材の栗を使用した栗ごはんの素『茨城県石岡市産 栗ごはん』を共同開発しました。  ※製造過程においては食品添加物を使用しておりません。


最新の投稿


【お米クイズ】第166回:炊飯における水の量

【お米クイズ】第166回:炊飯における水の量

「これは知ってほしい!」五ツ星お米マイスター・小池 理雄が、皆さんへお米のトリビアを毎回楽しくお届けする「お米クイズ」。 第166回は炊飯における水の量についてです。


ご自宅はもちろんアウトドアでも本格的なパエリアが味わえる「パエリア ミールキット」がオンラインストア・店頭にて販売開始!

ご自宅はもちろんアウトドアでも本格的なパエリアが味わえる「パエリア ミールキット」がオンラインストア・店頭にて販売開始!

渋⾕ストリーム3階に位置するバルセロナで⼀番美味しいパエリアを提供するシーフードレストラン「XIRINGUITO Escribà(チリンギート エスクリバ)」から、ご自宅はもちろん、キャンプや海などのアウトドアシーンでも本格的なパエリアが味わえる「パエリア ミールキット」を2021年11月19日(金)よりオンラインストア・店頭にて販売開始しました。


ファミマの具材にこだわった贅沢おむすび”ごちむすび”シリーズ発売から、約1年1か月で累計販売1億食を突破!~お米・海苔・具材の絶妙なバランス、毎日食べたくなる美味しさ~~

ファミマの具材にこだわった贅沢おむすび”ごちむすび”シリーズ発売から、約1年1か月で累計販売1億食を突破!~お米・海苔・具材の絶妙なバランス、毎日食べたくなる美味しさ~~

株式会社ファミリーマートは、2021年9月に創立40周年を迎えました。様々なきっかけでお客さまがさらにファミリーマート店舗に足を運んでいただけるようになる(=ファミマる。)ために、今年は40周年に向けたチャレンジ「40のいいこと!?」に取り組んでいます。 「40のいいこと!?」の5つキーワードの1つである「もっと美味しく」の一環として発売している具材にこだわった贅沢おむすび ”ごちむすび”シリーズ の累計販売数が、2020年10月6日(火)の発売開始から約1年1か月でシリーズ累計販売1億食(※2021年10月31日時点)を突破しました!


【お米クイズ】第165回:お米の保管

【お米クイズ】第165回:お米の保管

「これは知ってほしい!」五ツ星お米マイスター・小池 理雄が、皆さんへお米のトリビアを毎回楽しくお届けする「お米クイズ」。 第165回はお米の保管についてです。


【AKOMEYA TOKYO】11月19日(金)より、「福で彩るお正月」フェアを開催!

【AKOMEYA TOKYO】11月19日(金)より、「福で彩るお正月」フェアを開催!

今年一年を総括し、来年も豊かな年でありますようにと願うお正月。AKOMEYA TOKYOでは、五色に彩った日本のお正月にぴったりのおめでたいアイテムや、お正月の食卓に欠かせない食品や食雑貨、ご挨拶に使いたいお年賀アイテムなど多数取り揃え、11月19日(金)より、「福で彩るお正月」フェアを開催します!


アクセスランキング


>>総合人気ランキング