「お米をプラにするなんてけしからん!」……苦節20年、誤解を乗り越え、やっと時代がついてきたバイオマスレジン南魚沼の取り組み

「お米をプラにするなんてけしからん!」……苦節20年、誤解を乗り越え、やっと時代がついてきたバイオマスレジン南魚沼の取り組み

先月ご紹介したお米由来のバイオマスプラスチック(ライスレジン)を使ったピープル製のおもちゃ。この素材は全て、バイオマスレジン南魚沼という会社による製品です。主に廃棄米を原料としたもので、SDGs的観点から見ても画期的な試みと言って良いでしょう。今回は同社の変遷と、現在のお米由来のバイオマスプラスチックについて同社企画営業部の杉原孝行部長に話を聞きました。


バイオマスレジン南魚沼によるお米由来のバイオマスプラスチック(ライスレジン)

バイオマスレジン南魚沼の創業は2017年です。しかし、同社代表の神谷雄仁さんはさらに遡ること20年ほど前から、バイオマステクノロジー事業の構想を始めていたとのことで、特に日本中どこにでもある「お米(廃棄米)」を使った再生製品を作り社会や環境に寄与したいと考えていたそうです。
ただし、前例がない取り組みです。今日こそ、各方面から高評価を得ているバイオマスプラスチック(ライスレジン)ですが、ここに至るまでの道のりは決して容易いものではなかったそうです。そんな同社の変遷と、現在の事業例などを杉原さんに聞きました。

バイオマスレジン南魚沼 企画営業部・部長の杉原孝行さん

「3年に一度は心が折れる場面」に遭遇した

――バイオマスレジン南魚沼の創業は2017年ですが、代表の神谷雄仁さんは、それ以前からこういった取り組みに着目されていたようですね。

杉原孝行さん(以下、杉原) はい。神谷自身は「苦節20年」なんて言っています(笑)。

神谷自身はバイオマス、あるいはプラスチックの研究者でも技術者でもなく、もともとは商業施設開発のコンサルタント、食品商社で開発などを行っていました。そんな中、今から20年ほど前にバイオマス関連事業を思い立ち、活動を始めたようです。

また、2005年に開催された『愛・地球博』で、ここで見たさとうきび由来のバイオエタノール製品を見て「バイオマスの時代」を直感し、「日本では何ができるか」と考えた際、「お米」という素材を思いついたようです。そこで2005年に弊社の前身となるバイオマステクノロジー社を創業し、2017年に現在のバイオマスレジン南魚沼を設立。2020年にバイオマスレジンホールディングスを設立し、現在に至っています。

――20年前、すでに「廃棄米」などは、問題視されてたのでしょうか。

杉原 要は、お米由来のバイオマスプラスチック(ライスレジン)は有意義な試みではあるものの市場・ニーズが当初そこまでなかったんですね。

例えばバイオマスプラスチック(ライスレジン)をなんらかの商品・製品にしようとします。その際「一緒にやろうよ」と言っていただける他の企業さんと一緒に商品化を進めていくわけですが、すぐに結果を出せるものでもありません。当然長期に渡るわけですが、他方で日本の大手企業は3年に一度くらいでトップが変わることがあります。トップが変わると、会社のスタイルも当然変わるわけで、こういった際に、続けてきた商品化がゼロになってしまうこともあったそうです。そのため「3年に一度は心が折れる」ような挫折を繰り返したと聞いています。

バイオマスレジン南魚沼代表の神谷雄仁さん。自らを「諦めの悪い起業家」と称していらっしゃいます

“七人の神が宿る”お米をプラにするなんてけしからん!

――当初はバイオマスプラスチック(ライスレジン)を使って、どんな商品化を考えていたのですか?

杉原 箸、食器、CDやDVDのケースなどのパッケージ商品など様々なものを試作していました。あるいはバイオマスプラスチック(ライスレジン)製の細長いベンチなど。

しかし、前例のない新しい素材ですので「強度はどうなんだ?」「匂いはしないのか?」など、かなりの数の試行錯誤を繰り返したそうです。

――素材となる廃棄米を使う、集めることでのご苦労はありませんでしたか?

杉原 これもかなりあったそうです。日本人にとっての「お米」は弥生時代から続く大切な食文化であり、ある種食のアイデンティティみたいなところがありますよね。「一粒のお米には七人の神が宿る」なんていう言い伝えもありますし。

一方で、廃棄米の問題はまだ多くの方がご存知なかった時代でもあり、「お米をプラスチックにするなんてけしからん」といった誤解を浴びる機会も多かったようです。

その都度、丁寧に説明をさせていただきました。「大切なお米だからこそ、廃棄されるのはもったいない」「だからこそバイオマスプラスチック(ライスレジン)として再生させたい」といったことをお話しさせていただき、少しずつご理解をいただきながら今日のニーズ、市場開拓に至ったというのが経緯になります。

バイオマスレジン(ライスレジン)の合理性は生産面でも

――各所に理解をいただくと同時に、自社工場を持ったことも大きな転換になったと聞いています。

杉原 それまでは外注の工場での生産を行っていましたが、生産面でのトライ・アンド・エラーを繰り返すうちに「やはり自分たちできちんとやったほうが良い」という考えから2017年に自社工場を作りました。このことで例えば市場からの要望をすぐに製品に反映させることができるようにもなりました。

――バイオマスレジン(ライスレジン)の製造フローはどういった流れになるでしょうか。

杉原 もともとの素材は先ほどもお話しした非食用米です。これにポリプロピレンPP、ポリエチレンPEを混練させてバイオマスレジン(ライスレジン)にしています。

とうもろこしやさとうきび由来のバイオエタノールは、かなり大掛かりなプラントが必要になってくるのですが、我々のバイオマスレジン(ライスレジン)は練り混ぜることがメインですので、小学校の体育館くらいの規模で十分です。ローコストで製品化できる点も合理的であると自負しています。

バイオマスレジン南魚沼の自社工場の様子

工場では主にお米(非食用米)由来のライスレジン3種のほか、植物由来の国産バイオマスプラスチック・ウッドレジンを生産しています

時代が追いつき、各企業がバイオマスレジン(ライスレジン)を採用!

――前回ご紹介したピープルの「お米のおもちゃ」シリーズもそうですが、最近はバイオマスレジン(ライスレジン)を使った製品を目にする機会が増えました。主だったところではどんな事例がありますでしょうか?

杉原 影響力の強いところで言うと、日本郵便のレジ袋でしょうか。昨年7月のレジ袋有料化に伴い、郵便局のレジ袋に、ライスレジン素材のものが採用されました。これはお米が30%入っているものです。

また、地元・南魚沼では家庭用ごみ袋に採用されたり、一昨年の5月に新潟市で開催された「G20新潟農業大臣会合」ではPRの一環でお箸を作りました。

郵便局のレジ袋になったバイオマスプラスチック(ライスレジン)

南魚沼市の家庭用ごみ袋にも採用されました

新潟市で開催された「G20新潟農業大臣会合」ではPRの一環でお箸にもなりました

杉原 さらにNEXCO東日本のPR用のクリアファイルに使われた他、ファッションブランド、リビングメーカーなどの製品に多数採用され、また大手デパート、大手不動産メーカーさんの社員食堂などでもバイオマスレジン(ライスレジン)製のスプーンや箸を採用していただいています。

NEXCO東日本のPR用クリアファイル。この他、様々な業態、様々な企業にバイオマスレジン(ライスレジン)は続々と採用されています

「環境×農業×地域貢献」でSDGsに寄与したい

――当初は、この取り組みを理解してもらったり、あるいは、生産面でも試行錯誤を繰り返したバイオマスプラスチック(ライスレジン)が、ここに来て時代と合致し高評価を得るようになった、というわけですね。

杉原 本当にありがたいことです。SDGsなどのサステナブルな活動の浸透の影響ももちろん強いのですが、こういったエシカルな活動を、企業やブランドが打ち出していこうとした際、どうしても大上段に構えてしまいがちです。しかし、サステナブルの本質は、たとえ大掛かりでなくても、身の回りの小さなことでも良いので少しずつ始めることが大切ですよね。そういった際、弊社のバイオマスプラスチック(ライスレジン)は身近で使いやすい、ピッタリの素材です。様々な企業やブランドからお声がけをいただく機会が多くなった背景には、こんな理由もあるのかなと思っています。

――今後、さらに叫ばれていくであろうSDGsの観点からバイオマスレジン南魚沼さんはどのような未来を描いていらっしゃいますか?

杉原 我々のスローガンは「Plastic Innovation for Tomorrow」というものです。未来というより明日のプラスチックを変えていく……そんな風に思っています。

また、環境面だけでなく農業にも貢献したいと考えており、実は弊社ではお米そのものも作るようになりました。

バイオマスレジン南魚沼が行うライスレジン用の農作の様子

杉原 実は今、食用のお米の需要は年々減少傾向で、新潟県でも減反が進んでいます。様々な事情から全国的に農作放棄地も増えている一方、日本における農業を衰退させてはならないと思っています。こういった考えから、弊社では、地元・南魚沼や福島の浪江町の休耕田等だった場所でバイオマスプラスチック(ライスレジン)用のお米自体を作っています。

つまり、「環境×農業×地域貢献」の3本柱が我々が考える未来に向けた取り組みなのですが、これこそがまさにSDGs的な社会貢献につながっていくのではないかと思っています。

バイオマスレジン南魚沼オリジナルの「お米の『SDGsバッヂ』」(880円税込)。
通販でも購入できます!

足早になりましたが、バイオマスレジン南魚沼の変遷と製品事例、そして未来への思いをお聞きしました。「お米とSDGs」のお手本のような取り組み、今後もさらなる発展と浸透に期待大です!

バイオマスレジン南魚沼【公式】 powered by BASE

https://biomassresin.official.ec/

お米から作った【純国産・バイオマスプラスチック】樹脂の開発・製造・販売を生業としております。米どころである新潟県南魚沼市からお届けします!

この記事のライター

音楽事務所、出版社勤務などを経て2001年よりフリーランス。2003年に編集プロダクション・decoを設立。出版物(雑誌・書籍)、WEBメディアなど多くの媒体の編集・執筆にたずさわる。エンタメ、音楽、カルチャー、 乗り物、飲食、料理、企業・商品の変遷、台湾などに詳しい。台湾に関する著書に『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)、 『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『台湾迷路案内』(オークラ出版)などがある

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