お米から作ったバイオマスプラスチック製おもちゃはサステナブルで環境はもちろん、赤ちゃん・お母さんにも優しい画期的商品だった!

お米から作ったバイオマスプラスチック製おもちゃはサステナブルで環境はもちろん、赤ちゃん・お母さんにも優しい画期的商品だった!

廃棄されるはずだったお米を原料とした、お米由来のバイオマスプラスチック「ライスレジン」。これは言うまでもなく様々なSDGsの達成に向けた取り組みから生まれたものです。この「ライスレジン」の取り組みについて、お米のおもちゃシリーズをリリースするメーカー・ピープルにお話しを伺いました。


ピープルのお米のおもちゃシリーズ

優しい質感のお米のおもちゃからはほのかにお米の香りが漂います

突然ですが、お米由来のバイオマスプラスチック「ライスレジン」というものがあるのはご存知でしょうか。精米時に発生する砕米、米菓などの製造過程で排出する米粉など、食用にはならずに廃棄されるはずだったお米を原料としたものです。

この「ライスレジン」は株式会社バイオマスレジン 南魚沼が製造した素材ですが、言うまでもなく様々なSDGseの達成に向けた取り組みから生まれたもの。この「ライスレジン」の取り組みは、今後さらにご紹介したいと思っていますが、今回はお米のおもちゃシリーズをリリースするメーカー・ピープルに取材。環境に優しいだけでなく、赤ちゃんのおもちゃとしてどんな魅力があるのかなどを、同社の小板史美さんにお話を伺いました。

ピープル株式会社・小板史美さん

「土に還るおもちゃを」の思いの中で見つけた「ライスレジン」

ーーお米ファンにとっては無視できないピープルのお米のおもちゃシリーズですが、もともとはどういった経緯で開発されたのでしょうか。

小板史美さん(以下、小板) 弊社はもともと1982年に創業した会社で、当初は室内遊具などを主に開発・販売していました。その後、知育玩具・ベビー玩具を中心に1〜2歳の赤ちゃんを対象にした商品を開発するようになったのですが、特に2000年代以降、「今までにない玩具を開発したい」「土に還るおもちゃを開発したい」といった思いがあり、当初はとうもろこし由来の生分解プラスチック素材を探していました。

そんな中、バイオマスレジン南魚沼さんと出会い、バイオマスプラスチック「ライスレジン」の存在を知りました。「生分解プラスチックを追求するより、“赤ちゃんにとって安心”という求められる玩具の開発につながるのではないか」「日本のお米が素材で、赤ちゃん・お母さん双方に喜んでいただけるのではないか」と思い、「ライスレジン」を使っての玩具作りを始めたという経緯です。


赤ちゃん・お母さん双方に喜んでもらえる玩具として開発されたお米のおもちゃシリーズ。写真は「お米の歯がためネックレス」(税込1430円・ピープル)

初めての積み木が楽しめる商品「お米のつみきはじめてセット 白米色」(税込9900円・ピープル)

玩具としてではなく「米製品」と表記されるお米のおもちゃシリーズ

――この「ライスレジン」、素材にはどういった特徴があるのでしょうか。

小板 「お米の含有率が51%以上」のものがメインです。一部、柔らかいものもあり、もう少し低い含有率になるのですが、堅いものは51%がお米です。このことで玩具でありながら「米製品」と表記できるところが当社自慢のこだわりです。

どうして、そこにこだわったかと言うとお母さんたちが求めているのは、0才のお子さんたちが「魅力的に映るもの」「安心・安全に渡せるもの」です。赤ちゃんは「口に何でも入れてしまう」という傾向がありますけど、そういった場合でも安心していただけるように、「おもちゃと食べ物の中間」みたいなイメージを持って、玩具に反映させているわけです。

これは玩具を作りながら、後から発見したことですが、お米が51%も入っていると、製造過程で「お米の“おこげ”のようなにおい」が自然に「お米のおもちゃ」につくんです。つまり、おいしそうな匂いがするため、赤ちゃんも欲するのだそうです。ご利用くださったお母さんからは「遊んでいるときのよだれがすごい」というお声もいただきました。

この効果もあり、お子さんにとってはむしろ「安心・安全素材で、舐めることを促進していただける」玩具になったと思っています。「舐める」という行為は知的にも発達を促すし、離乳食のためにも必要な行為だと言われていますので、赤ちゃんの発達にとって良い玩具であると自負しています。


食用の着色料を施したカラフルな商品「お米のどうぶつみき いろどり」(税込10780円・ピープル)。もちろん口の中に入れても安心です

お米由来特有の製造までの苦労も…

ーーただし、「ライスレジン」という素材を、それだけ繊細な赤ちゃん向け玩具に転じ、製品化するまでには相応のご苦労があったのではないかと思います。

小板 「お米の含有量を増やす」ことにこだわった一方、どうしてもお米の配合が多いことで、成型の段階で、焦げやすいという問題がありました。

プラスチックの製品も同様ですが、熱を加えて成型をし、その後に型から抜くという作業があります。この作業の中で、お米由来の素材であるため「焦げる」「ひっつく」という問題が起きてしまいました。そのため、普通のプラスチック樹脂の加工とは違う、ライスレジンの特性に合わせて、金型の温度調整に苦労しました。型を作る成形師さんという方がいるんですけど、その方も初めての経験で、色んなことを考えながら作ってくださったようです。こういった通常のプラスチックとは異なる特別な技法によって「お米の含有率が51%以上」の玩具ができました。

やわらか素材の「おこめのなめなめスプーン 白米色」(税込1650円・ピープル)

「お米でできている玩具だ」と印象付けた画期的PR

――市場開拓でのご苦労はありませんでしたか? 今ではお米のおもちゃシリーズは名が知れていますが、最初は大変だったんじゃないかと思います。

小板 流通に向けて弊社の担当者がまずやったことは、お米のおもちゃの積み木のワンパーツのサンプルをタッパーに入れて、流通先・マスメディアなどにお送りしました。今まで「タッパーにおもちゃが入って送られてくる」なんていうプロモーションはなかったはずですし、またタッパーを空けた瞬間、お米の香りもふわっと漂うため、「これはプラスチックではなく、お米でできている玩具だ」という印象を強烈に残せたそうです。

もちろん、それと合わせて百貨店や玩具店における安全基準もしっかりクリアさせていますので、市場でも流通でも当初から十分受け入れていただいたと聞いています。

お米のおもちゃシリーズでのSDGsへの参加意識

ーーお米のおもちゃシリーズが、特にSDGsにリンクした商品であると思われる点はどんなところでしょうか。

小板 いわゆるプラスチックを使うよりは、二酸化炭素の排出をかなり抑えられるという歴然とした事実が一つ。そして、「日本の農業を守る」という考え方もあります。

日本のお米は日本の食糧を支えていくのに不可欠なものです。しかし、例えば水害に遭い使えなくなったお米や、賞味期限が切れたしまったお米などを弊社の素材として買い取って使わせていただいている点では、SDGsに参加しているという気持ちがあります。

SDGsが叫ばれるようになってからときどき、お米の研究をしている学生さんからの問い合わせを受けるようにもなりました。「お米のおもちゃシリーズは『お米からできてる』って聞きましたが、どういうことですか」というような内容です。また、小学校で社会学習として「自分の身近な食べ物について調べて発表する」っていう授業があるらしく、その中でお米について調べた小学生たちがこの商品に出会い「取材をしたい」と申し込んでくれたりということもありました。

弊社が社会に向けて、SDGsを積極的に、また上手に発信できているかと言うと、自信がないところもありますが、お米のおもちゃシリーズという、わかりやすい玩具を作りお届けしていますので、それなりに貢献できているのかなとは思います。

また、バイオマスレジン南魚沼さんが、社会にむけて、SDGs関連やバイオマスプラスチックの有用性を発信されるときに、事例としてお米のおもちゃシリーズをご紹介いただいています。本当に有り難いことです。

現在では新潟県南魚沼市に「ピープル農場」として田んぼを借りるに至ったそうです

「原料のお米をもっと知りたい」という開発者の思いと「田植えや収穫に興味を持って活用して欲しい」という農家の方々の思いが出会い、昨年バイオマスレジン南魚沼の協力により田んぼを借りたそうです

お米のおもちゃシリーズをきっかけにさらなる未来へ!

ーー発売から11年目を迎えたお米のおもちゃシリーズですが、これから先の未来に向けての思い、SDGsに対しての思いがありましたらお聞かせください。

小板 近年のお母さんたちが求める商品の傾向は「ストーリー性のあるもの」です。ただ「おもちゃを買ったよ」ではなく、その背景にはどんなストーリーがあり、どんな経緯で開発されたものかを求められます。その点でも、お米のおもちゃシリーズは十分なストーリーがある商品であり、ご支持いただけることが本当に嬉しく思っています。

また、SDGsという世界中で注目される取り組みの中でも時代に合っている玩具でもあり、この点もさらに広まっていけば良いなと考えています。

弊社はこれまで「お子様とそのお子様の生活に関わる方」のことをしっかり考えながら商品開発をしてきました。この点は今後もさらに注力しながら、同時に「お子様とそのお子様の生活に関わる方」が考えられる社会への問題意識、課題なども反映させた商品をお届けしていきたいと思っています。お米のおもちゃシリーズをきっかけに、弊社全体の未来への取り組み、環境への取り組みを反映させたさらなる商品を作っていければ良いなと思っています。

小板さんのお話から、お米のおもちゃシリーズが、あらゆる面で合理的で優れており、SDGsにも合致した玩具であることがよくわかりました。
特にお米ファンの方にはお勧めの製品です。赤ちゃん・お母さんへプレゼントされる機会がある方、是非チェックされてみてはいかがでしょうか。

純国産お米のおもちゃシリーズ | おもちゃ | 乳幼児玩具メーカー・ピープル

https://people-kk.co.jp/toys/okome/

何でも口に入れてなめる赤ちゃんに安心な「お米のおもちゃ」は、原料に本物の国産米を使用。製造も全て日本国内で行っています。「純国産」の安心感から出産祝いやお誕生日祝いの贈り物に選ばれています。

この記事のライター

音楽事務所、出版社勤務などを経て2001年よりフリーランス。2003年に編集プロダクション・decoを設立。出版物(雑誌・書籍)、WEBメディアなど多くの媒体の編集・執筆にたずさわる。エンタメ、音楽、カルチャー、 乗り物、飲食、料理、企業・商品の変遷、台湾などに詳しい。台湾に関する著書に『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)、 『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『台湾迷路案内』(オークラ出版)などがある

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