
七夕までの5日間は古くから半夏生と呼ばれています。これは農業の目安とされる雑節のひとつで、田植えは半夏生までに終えるものとされてきました。そして無事に田植えを終えると、集落ごとに「さなぶり」が行われました。これは田植えのために山から招いた田の神に感謝して山へと送り出し、農家が互いに労を労うもの。お供えを田の神に捧げ、宴を開いて五穀豊穣を祈りました。

この頃は麦の収穫時期にもあたるため、香川ではうどんを、奈良ではむぎを用いた半夏生餅を作って振る舞う習わしがあるのだとか。
また、関西ではタコを食べる習わしが知られています。これは植えたばかりの苗がタコの足のようにしっかり根を張ってくれるようにという願いから。タコは疲労回復の働きがあるタウリンが豊富。田植えで疲れた体を労り、次の農作業に向かって体力を回復させる意味合いもあったのでしょう。先人の智恵に、あらためて驚かされます。

お刺身や酢の物もいいけれども、タコならではの旨みを味わえるのが炊き込みご飯。ボイルされたタコと、店頭に並び始めた新生姜と一緒に炊き込めば、簡単にご馳走ご飯のできあがり。茹で蛸自体にしっかり旨みがあり塩味もあるため、味付けはめんつゆをほんの少し加えるだけで十分です。
まとまった雨が降りがちで湿度も気温も高く疲れやすい今の時期、タコを食べて夏を迎える元気をつけましょう。
好きが高じて食をテーマに20余年、食べては書く日々を送るライター・エディター。