
「ごちそう!おみそ汁レシピ」第20回は、お鍋のたびに、少しだけ余ってしまう野菜や豆腐。翌日のおみそ汁にもってこいの食材です。特に春菊は日が経つと香りが抜けてしまうため、なるべく新しいうちに使い切りましょう。今回は弾力のある焼き豆腐を使いましたが、もちろん普通の豆腐でも美味しく作れます。ぜひお試しください。
栄養の宝庫、冬の香味野菜「春菊」

春菊は、関西では「菊菜(きくな)」と呼ばれる香味野菜。収穫期は11月から3月ごろまでで、キク科シュンギク属に分類されます。アジアでは柔らかな葉を食用としますが、ヨーロッパでは観賞用として楽しまれているそう。ちなみに春菊の花は、マーガレットの花びらの中心が黄色く染まったような、かわいらしい姿をしています。
なお、春菊の味や香りは生育する環境に大きく影響を受け、関東では少し苦みがありますが、西へ行くほど甘みが増してクセも和らぐと言われています。
豊富なβ―カロテンとカルシウムを含有
春菊の栄養素で代表的なものが「β―カロテン」。緑黄色野菜に豊富に含まれる成分で、体内でビタミンAに変換されて、皮膚や粘膜を保護してくれます。風邪の予防にも効果があるので、これからの季節にぴったりの野菜です。春菊は、このβ―カロテンの量が葉物野菜の中ではトップクラスで、ほうれん草よりも多く含みます。
さらに春菊には豊富な「カルシウム」が含まれています。骨や歯を丈夫にするほか、イライラ解消にも役立つミネラルです。また、カルシウムをサポートする「ビタミンK」も含有しているので、骨粗しょう症の予防や成長期の子供の骨の強化にもはたらきます。
爽やかな香りの成分はリラックス効果あり
春菊の独特の香りは「αピネン」と「ペリルアルデヒド」、2つの成分によるものです。αピネンはひのきなどにも含まれる清涼な香りで、精神をリラックスさせる効果があります。また、ぺリルアルデヒドはシソと同じ芳香成分で、これらの香りが自律神経を鎮めたり、胃粘膜のはたらきを活発にすると言われています。
煮崩れしにくく味が浸みやすい焼き豆腐

すき焼きや田楽に欠かせない「焼き豆腐」。水切りした木綿豆腐の表面を、直火で炙ったものです。昔は串を刺して炭火で焼いていたそうで、密度の高い専用の豆腐を作っている店もあります。焼き目をつけることで、豆腐がしっかり崩れにくくなり、独特の弾力と香ばしい風味が加わります。また、水分が少ないため味の染み込みがよく、すき焼きや煮物に使われるのはこのためです。
もちろん栄養価は豆腐なのでパーフェクト。大豆のたんぱく質と各種ビタミン、ミネラル、イソフラボンがたっぷりです。くずれにくいので、ステーキやサラダなど、様々な料理に工夫して使ってみてはいかがでしょう。
「焼き豆腐と春菊のおみそ汁」レシピ
■手順
今回のポイントは、熱の入れ方です。豆腐はゆっくり。春菊はさっと一瞬で。下ごしらえが味の決め手となりますので、小さな容器に切った具材を分けて用意しておきましょう。
1.春菊を葉先と茎に切り分けておきます
春菊に限らずやわらかい葉物野菜は、葉の先と茎の火の通りに差があります。そのため、それぞれの部位を分けて汁に投入する必要があります。ちょっとひと手間ですが、このように分けて切っておきましょう。

2.焼き豆腐を手で割りほぐします
焼き豆腐は適当な大きさに手で割ります。包丁を使用してもいいですが、割ることで断面に凹凸ができ、味の染み込みがよくなります。このとき、水分が出ることがあるので、水が出たら捨てておきます。

3.鍋を火にかけ、豆腐を煮ます
お鍋に人数分の出汁を入れて火にかけ、沸騰したら豆腐を加えて弱火で煮ます。火加減は、ようやく沸騰が続く程度。火が強すぎると、豆腐の中の水分が沸騰して「すが立つ」状態になってしまいます。そうなると口当たりが悪いので、ゆっくりゆらゆらと揺れる程度で火を通していきます。

4.味噌は豆の粒が残った東北のつぶ味噌
3~4分煮たら春菊の茎の部分を鍋に入れ、すぐに火を止めます。春菊は煮えやすいので、煮込む必要はありません。さっと混ぜたら火を止めたまま味噌を溶き入れます。今回はお豆腐によく合う、豆の粒が残ったつぶ味噌を使用しました。味噌が溶けたら再度火にかけ、沸騰寸前で火からおろします。

5.春菊の葉先を入れて出来上がり!
お椀に春菊の葉先をたっぷり入れ、上から熱い汁を注げば出来上がり。
葉先は熱に触れるだけで煮えてしまうため、風味を飛ばさないよう生の葉を使用します。

お豆腐は好みによって大きさを調整してください。あまり細かくするとそぼろ状になってしまうため、ある程度の大きさは保つようにした方がきれいに仕上がります。

今回のまとめ
春菊は好き嫌いの分かれる野菜ですが、栄養価が高いので、ぜひ食べていただきたい食材です。きのこ類や根菜とも相性がいいので、冷蔵庫の残り野菜と上手に組み合わせて熱々おみそ汁を楽しんでください。お酒を飲んだ後にも、春菊の風味はよく合います。
春菊(シュンギク)又は菊菜(キクナ)の栄養価と効能:旬の野菜百科
https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/vegitable/syungiku3.htm
春菊の栄養と効能が凄い!効果的な食べ方とは?【食べ過ぎ注意】
https://gourmet-note.jp/posts/2657
料理記者を経て、飲食店経営や化粧品会社のマーケティングの経験をもつ。
根っからのごはん党です。趣味は世界の美味しいものを食べ歩くこと。
飲食店経営者として厨房に立っていた経験から、レシピ開発のお仕事もさせてい
ただいています。