春の味覚・せりのおみそ汁で体調も整えましょう

「ごちそう!おみそ汁レシピ」第二回は、さわやかな香りが春を運ぶ香味野菜「せり」の登場です。おいしくごはんを食べるためには、栄養のバランスにも注意したいところですが、食物繊維たっぷり、胃腸の調子も整えてくれるせりは、炭水化物と好相性。ごはんのお供として、積極的に取り入れたい優秀野菜です。緑の色も鮮やかで、食卓を華やかにしてくれますよ。
■せりの「旬」は年末から4月ごろ

せりの旬は12月から4月。俳句の季語でも春、とりわけ早春の光景を詠む歌にふさわしい、フレッシュな香りの春野菜です。近年では水耕栽培が発達し、一年中スーパーなどで売られるようになりましたが、やはり自然の中で育った旬のせりは格別です。
ちなみに、せりを使った代表的な料理である秋田の「きりたんぽ鍋」では、地元の方いわく「必ず根を入れないといけない」そうです。なぜなら、せりの根は茎や葉より香りが強く、お鍋の風味をよくしてくれるため。もし根のついたせりが手に入ったら、ぜひ捨ててしまわずにお料理に利用してみてください。
■香味の正体はアロマオイル成分
芳香成分「オイゲノール」とは
せりの独特な香味は「オイゲノール」という成分によるもの。実はこのオイゲノール、クローブ(丁子)やシナモンにも含まれるアロマオイル(精油)成分のひとつなのです。
オイゲノールを含む植物には様々な薬効があると言われ、古くから民間治療に使用されてきました。昨今の研究では、抗菌作用、抗ウイルス作用、鎮痛作用、防虫作用などがあると言われています。
東洋医学では「薬草」として扱われます
東洋医学の世界においてもせりは薬草として扱われ、古代中国の本草書「神農本草経」には、「水芹(すいきん)は婦人の赤沃(血尿)を治し、血を止め、精を養い、血脈を保ち、気を益し、人体を肥健ならしめ、食を嗜(たしな)ましめる」と記述されているそうです。
「せりのおみそ汁」レシピ
■熱で香りが飛びやすいので注意
では、おみそ汁のレシピです。せりは個性が強いので、慣れない方は単独で使った方が失敗しません。最も避けたいのは香りの強いもの同士。香りがけんかして台無しになるので、クセの強くないものから試してみてください。今回はせりオンリーのおみそ汁にしました。すっきりしてごはんによく合いますよ。
■手順
1.根がついていたら丁寧にほぐします
まずはせりを洗います。葉がちぎれやすいので、そっとやさしく。もしも根がついていたら、ボウルの水の中でていねいにほぐして、細かいごみや泥を取り除きます。洗いあがったら、ざるなどに乗せて水を切ります。
2.根、茎、葉に分けて切ります

まな板にせりを置き、根、茎、葉ごとに切り分けます。それぞれお鍋に入れるタイミングが違いますので、混ざらないようにしておきましょう。
葉の部分だけ、さらに手で適当な大きさにちぎって分けておくと食べやすいです。
3.先にお出汁にお味噌を溶いておきます

お鍋に人数分のお出汁を入れ、火にかけます。沸騰直前で火を止め、お味噌を溶きいれ味を調えておきます。
通常ならお出汁で具材を煮て、仕上げにお味噌を溶きますが、せりは一瞬で煮えてしまうため、先に味付けを済ませて最後に入れた方が、味も仕上がりもよくなります。
使ったお味噌はこちら。きりっとした辛口の仙台味噌です。さらりとした口あたりで、せりの芳香を生かします。
4.せりを部位ごとに時間差で投入
せりの準備が整ったら、おみそ汁を再度火にかけ、沸騰直前になったら根の部分だけを入れます。10秒数えて、こんどは茎の部分を入れ10秒で火を止めます。その後、葉の部分を入れてさっと混ぜたら出来上がりです。
■葉を入れたらすぐに器へ盛り付け

葉を入れた後は、間髪入れずに器に盛りつけ素早く食卓へ。熱でどんどん香味が飛ぶため、せりの料理は時間との勝負です。時間が経過すると色も悪くなりますので、作ったらその場で食べきるようにしましょう。
せりはビタミンや栄養が豊富
せりは抗酸化作用が高いビタミンCや、ミネラル、βカロテンが豊富。そのため、ごはんの炭水化物と合わせて食べることで、相乗作用が生まれてエネルギー消費が促進されます。ぜひ、緑の野菜パワーでより効率の良い栄養摂取をめざしてください。
今回のまとめ
昔は水のきれいな川べりに自生していたせりですが、今は護岸工事で見かけなくなりました。夏には白い小さな花を咲かせ、目を楽しませてくれます。田舎の川で見られるかもしれませんので、ぜひ機会があれば探してみてください。
料理記者を経て、飲食店経営や化粧品会社のマーケティングの経験をもつ。
根っからのごはん党です。趣味は世界の美味しいものを食べ歩くこと。
飲食店経営者として厨房に立っていた経験から、レシピ開発のお仕事もさせてい
ただいています。