日本は四季の国。
春夏秋冬の移ろいが、暮らしに、風習に、食べ物に、
四季折々の彩りを添えてきました。
食いしん坊の人にとっては
暮らしの中で一番ビビッドに感じられる四季は
旬の食べ物かもしれませんね。
四季と食べ物を巡るエピソードで
人とごはんのつながりを辿る「ごはん歳時記」
さて今月は「おはぎ」です。

もち米とうるち米を蒸して、お餅のようについてしまわずに、つぶつぶが残った状態のまま丸めてあんこで包んだ食べ物と表現すれば、「おはぎ」も「ぼたもち」も同じですね。
お米は神様の恵みでもたらされた貴重な食べ物として古来大切にされてきました。種まきなどの農作業が始まる春のお彼岸のころや、収穫の秋を迎える秋のお彼岸のころには、神への祈りや感謝を表わすために、お米で作った「おはぎ」あるいは「ぼたもち」をお供えしたのでしょう。
あんこの材料になる小豆の赤い色は、厄除けの力を持つ神聖な色とされているので、お米をあんこで包むことでさらに神の力を取り込むことを目指したのではないでしょうか?
「おはぎ」または「ぼたもち」はお供えにふさわしい食べ物なのです。
春はこしあん、秋はつぶあん、どうして違いがあるんだろう?

あんこの材料になる小豆の収穫時期は秋。収穫直後の秋であれば、小豆を皮ごと煮てあんこにするつぶあんにしても皮がまだ柔らかいので口当たりもいいのですが、冬を越して春になると小豆の皮が硬くなってしまうので、皮を除いて作るこしあんでないとおいしいあんこになりません。
そこで以前は秋のお彼岸にはつぶあん、春のお彼岸にはこしあんを使って、「おはぎ」または「ぼたもち」を作ったようです。
「こしあん=ぼたもち」「つぶあん=おはぎ」は季節感の違い。
小豆の収穫時期のせいで、春のお彼岸はこしあん、秋にはつぶあんで作ったものが供えられましたが、春のお供えはこしあんの色が春咲く牡丹の花に似ているので「牡丹餅」と呼ばれるようになり、転じて「ぼたもち」となりました。
一方、つぶあんを使う秋のお供えはあんこに混じる小豆の粒が、秋に咲く萩の花に似ているので「はぎのもち」転じて「おはぎ」になったと言われます。
あんこの種類による呼び方の違いというよりは、四季を敏感に感じ取る日本人の季節感から呼び名が変わったようです。
今では小豆の保存法が進化して、一年中皮の柔らかい小豆が手に入るようになったので、春でもつぶあんの「おはぎ」が食べられるようになり、「ぼたもち」よりも高級感の感じられる「おはぎ」という呼び名のほうが広く使われるようになっています。
他にも呼び名がある「おはぎ」

春は牡丹、秋は萩に因んだ呼び名がある「おはぎ」ですが、他にも呼び名が存在するようです。
夏場の「おはぎ」は「夜船」と呼ばれるそうです。「おはぎ」はお餅と違って臼と杵を使って搗きませんから音が出ないので、いつ作った(搗いた)かがわかりません。つまり「いつ着いた(搗いた)かわからない=着いたのがわからない船=夜船」というそうです。
では冬は?「北窓」だそうです。「餅を搗かない」=「搗き知らず」=「月知らず」=「月が出たのがわからない」=「北側の窓」=「北窓」、ちょっと強引な言葉遊びですね。
他にも徳島や群馬の一部では「おはぎ」を「半殺し」と呼ぶところもあるそうです。米粒が半分残っている状態を指しているらしいですが、ちょっと怖い「おはぎ」ですね。
「おはぎ」には、日本人が大切にしている、お米と小豆と季節感がいっぱい入っています。お墓参りに行ったら、周りの風景も見まわして、季節感といっしょにおいしく「おはぎ」を召し上がってください。
おはぎ関連リンク
ヘルシーな玄米おはぎの作り方はこちらをどうぞ。

「おはぎ」は秋の七草の「萩」の花が小豆の粒に似ていることからそう呼ばれるようになりました。今年は玄米でも作ってみませんか?子どもたちと楽しみながら作りましょう。玄米の味がいい仕事をしていて、甘味の量をおさえてくれます。うるち米の玄米でもつくれますし、精白していないもち米だとお米の甘さがさらに感じられるおはぎになりますよ!
もち米をおいしく炊く方法はこちらをご覧ください。
お米のおいしい炊き方:もち米(炊飯器) | お米をおいしくたべよう! | ミツハシライス
http://www.3284rice.com/fun/oishiku/takikata_07/ミツハシライスがおすすめする、炊飯器を使ったもち米のおいしい炊き方をご紹介します。 水加減からほぐし方まで説明しています。