白い米つぶだけが「お米」ではありません。
■もみが白米になるまでのステップ。

収穫されたイネ(もみ)は表面のもみ殻を取り去ると玄米になります(※1)。玄米の表面には「ぬか層」(※2)という表皮が付いているため、玄米はベージュ色をしています。
また玄米には「胚芽」と呼ばれる部分があり、この部分は米つぶが生長した時には芽や根になります。

玄米の断面図
玄米の構造
名称 | 主な特徴 |
---|---|
果皮 | 玄米の表面を包んでいる。 |
種皮 | 果皮内部の薄皮。種皮から中が植物学的には種子に相当する。 |
こふん層 | 胚乳の外表面を包んでいる。 |
胚芽 | 発芽してイネの身体を形成するもと。 |
胚乳 | 発芽後に胚芽の栄養となる。デンプンを貯蔵する細胞があり、外表面は 糊粉層に包まれている。精白米として食べる部分。 |
ぬか層 | 果皮から糊粉層までと胚芽の部分。ぬか層を除去したものが精白米。 |
私たちが炊いて食べる白米は、玄米から「ぬか層」や「胚芽」の部分を取り去り、米つぶの中心にある「胚乳」だけを残したものです。「胚乳」は文字通り乳白色をしていますので、白い米つぶ=白米と呼ばれるのです。
もみから白米へ

もみが白米になる段階で玄米・分つき米・発芽米などができる
玄米に付いている「ぬか層」をほぼ全部取り去ったものが白米ですが、栄養豊富な「ぬか層」や「胚芽」を残したお米もあります。「分つき米」がそれで、残す率によって「七分づき」「五分づき」「三分づき」などと呼ばれます。また「ぬか層」は取るが「胚芽」は80%以上残した「胚芽米」と呼ばれるお米もあります。
収穫された後の加工の仕方で、米つぶはいろいろな種類に分かれるのです。
- ※1:稲穂からもみを外すことを脱穀、もみからもみ殻を取り去る作業を「もみすり」と言い、「もみすり」の済んだ状態が「玄米」です。
- ※2:ぬか層は外側から果皮・種皮・糊粉層の三層構造になっています。イネが育つための栄養分を蓄えている胚乳を守る役割を持っており、同時にビタミンなどの栄養素も多く含んでいます。
■玄米や胚芽米は、白米よりも栄養豊富。
玄米は「ぬか層」が付いたままですから、白米と同じように炊くとぼそぼそした食感になってしまいますが、炊いた後も白米に比べて食物繊維は約6倍、ビタミンB1は約5倍、カルシウムは約2倍、鉄分は約3倍も多く含まれています。また同じ量の白米よりもカロリー数が低く、消化も遅いのでダイエットにも向いているお米です。分つき米も玄米に近いほど栄養素が多く残っています。
胚芽米はイネの生長を促す部分である胚芽のビタミン類を豊富に含んでいますが、「ぬか層」は取り去られているので玄米や分つき米よりは食べやすいお米になっています。
玄米を水に浸けて少しだけ発芽させたものは「発芽玄米」と呼ばれます。発芽を促進する酵素が玄米の栄養分を変化させGABAというアミノ酸を増やすことで注目されています。GABAは興奮を鎮める成分を多く含んでおり、認知症予防にも効果があるかもしれないと言われています。
お米の種類と栄養
米の種類 | とう精程度 | 主な栄養 |
---|---|---|
玄米 | 0% | 食物繊維、脂質、ビタミンB群(とくにビタミンB1とB2)、ミネラルが多く含まれている。 |
五分つき米 | 50% | 精白米に比べ、食物繊維、脂質、ビタミンB群、ミネラルが豊富。玄米より食べやすい。 |
七分つき米 | 70% | |
精白米 | 100% | 炭水化物が多く含まれており、効率の良いエネルギー源となっている。 |
胚芽米 | 胚芽が80%以上残るようにとう精した米。脂質、ビタミン類(とくにビタミンB1)が多く含まれている。 |
日本人が好むふっくらした粘りを持つごはんは白米で炊くのが一番ですが、栄養素を多く含む玄米も工夫次第でおいしく食べられますから、健康志向の方は一度トライしてみる値打ちがありますよ。
■とがずに炊ける、便利な無洗米。
普通のお米は炊く前に水洗いして米つぶの表面に付いている「肌ぬか」を落とす必要がありますが、こうした手間を省いてすぐに炊けるようにした無洗米はその便利さのおかげで消費者に受け入れられました。
無洗米で吸水性の高い玄米も登場していますが、こうした玄米の栄養価と食べやすさを追求した玄米を加工玄米と言って最近では急速に研究が進んでいます。
無洗米のメリット
- 簡単に炊けて時間の節約
洗米する手間と時間をカットできる。 - 水資源と水道代の節約
ぬか部分はきれいに除いてあるので、水を使って洗う必要がない。 - 河川や海の水環境にやさしい
水質汚濁の原因のひとつである、研ぎ汁を出すことがない。
■異色のお米もご紹介します。
おなじみの白米以外に「黒米」や「赤米」といったもみに色のついたお米もあり有色素米といいます。鉄やカルシウム、ビタミンが豊富に含まれているため、健康食としても注目を集めています。また、古代に栽培されていたという説もあることから「古代米」と呼ばれたりしますが、これは野生のイネの多くが赤いもみであり「赤飯」の起源と言われることや、黒米が「おはぎ」の起源で古くからお祝いの米とされてきたことに由来しています。

黒米(左)と赤米(右)
出典:一般社団法人 日本雑穀協会
米は、ごはんだけでなく、餅・お菓子・お酒にもなります。
ごはんとして食べるお米は「うるち米」と呼ばれるイネの種類ですが、お餅になるのは別の種類の「もち米」です。「もち米」は蒸した時に粘り気を発揮するでんぷんであるアミロペクチンだけを含んだお米なので、臼と杵で米つぶをつぶすと、もっちりとのびるおいしいお餅に変身してくれます。もち米は求肥(ぎゅうひ)や羽二重(はぶたえ)などの和菓子やおかき・あられの原料にもなります。

また、日本酒を作るのに欠かせない「酒米」という種類のお米もあります。
米つぶが「うるち米」より大つぶですから、胚乳を中心近くまで削ることができます。そうすることによって雑味のないおいしい日本酒ができあがります。最近は「純米大吟醸」などの高級酒では消費者が酒米の銘柄にも注目するようになってきました。「山田錦」や「雄町」「五百万石」など酒米の銘柄を記した日本酒ラベルも見られるようになりました。
美酒を生み出すのもお米の力なんですね。