最期の晩餐メニュー : ごはんいろいろ、想いいろいろ。

最期の晩餐メニュー : ごはんいろいろ、想いいろいろ。

死ぬと決まってしまったら、最期に何が食べたいですか?やっぱり自分の好物でしょう。私はタケノコごはんに決めています。


タケノコは季節の便りだった。

小さいころからタケノコは大好物だった。父の実家は京都・丹波の山奥。古い茅葺の家の裏には小さな竹林があった。遊びに行くと祖父が鍬を持って竹林に連れて行ってくれた。タケノコ掘りである。手入れのしてある竹林ではないので、数m伸びた竹も折れて倒れた竹もある。その中から頭の先がちょっとだけ見えている若竹を探し、周りの土をどけてから根元に鍬を入れる。
ざくっと音がして、根元が真っ白のタケノコが顔を出す。竹籠にいっぱいタケノコを入れて、家に帰ると祖母が大きな鍋でタケノコを茹でてタケノコごはんを炊いてくれる。やや濃いめでちょっと甘みの強いタケノコごはんがおばあちゃんのタケノコごはんだった。
遊びに行けない年にはタケノコが家に届いた。祖父が掘ったタケノコを叔父が新聞紙にくるみ、竹籠に入れて送ってくれたのだ。笹の葉が入った小荷物は、田舎から届く季節の便りだった。

母の炊くタケノコごはんだけは必ずお代わりした。

家に届いたタケノコを今度は母が調理する。母が炊くタケノコごはんは祖母の炊くのよりも少し薄味、そのかわりタケノコも油揚げもたくさん入っていた。おかずになったタケノコの煮物の上には、玄関先に生えていた木の芽の葉っぱがちょんと乗っていた。
それほどごはんをよく食べる子ではなかった私だったが、タケノコごはんだけは例外だった。必ずお代わりをした。年に一度、この季節にしか食べられないタケノコごはんだからお代わりした。母の炊くタケノコごはんだけは特別のごちそうだった。
今でこそタケノコの水煮は年がら年中手に入るし、居酒屋のメニューにはいつでも若竹煮がのっているが、昭和30年代、タケノコごはんは春の旬の時期にしか食べられないメニューだったのだ。

私の最期の晩餐はタケノコごはん。

死ぬ前に最期の晩餐に何を食べたいかと聞かれたら、タケノコご飯と答える。以前はマツタケごはんと答えていたが、今は迷わずタケノコごはんだ。
マツタケは秋のほんの短い時期にしか手に入らない。しかもこのごろでは国産はほとんどない。従って値段もびっくりするほど高い。あんな高いマツタケを食べたら喉が詰まって死期が早まってしまう。それに死にかけの人間から季節外れにマツタケご飯を食べたいと言われたら、周りの人間は困惑するだろう。だからタケノコご飯に乗り換えた。
さて、最期の晩餐である。タケノコご飯に味付け海苔をたっぷり散らして食べる。お茶碗にてんこ盛りである。最低でも一膳はお代わりをする。若竹煮が付いていればなお良い。最後にお茶碗の底に張り付いたタケノコを丁寧に取って口に入れて一巻の終わり。食べ残すことも思い残すこともない最期の晩餐である。
最期の晩餐を迎えるまであと何膳、タケノコごはん食べられるだろうか。春の楽しみだ。

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