
撮影「Takashi Maki」
二十四節気「小寒」1月5日~1月19日
「小寒」と「大寒」の1カ月間は、一年で最も寒い頃。「小寒」の初日を「寒の入り」と呼び、この日から立春前日までを「寒中」と呼びます。地上のすべてが凍てつき、雪がすべてを覆う季節、田んぼも眠りにつき、春が来るまで雪の下で英気を養います。
寒に入って九日目は「寒九」と呼ばれ、この日に降る雨は豊作のしるしとされました。また、この日に汲んだ水は「寒九の水」と呼ばれ、薬にもなると尊ばれたとか。

撮影「Takashi Maki」
「小寒」の初候は「芹乃栄(せりすなわちさかう)」1月5日~9日。春の七草のひとつ、セリが凍てつく水辺で競り合うように伸びる頃。手を切るほどに冷たい水に育まれたセリは香り高く滋味豊か。鍋の具としても好まれます。ことに秋田の三関セリは根が白く長く、きりたんぽ鍋には欠かせません。
ベータカロテンなどビタミン類を豊富に含むセリは免疫力アップにも役立ちます。セリたっぷりのあたたかい鍋で、寒い冬を乗り切りましょう。
次候は水泉動(しみずあたたかさをふくむ)」1月10日~15日。地上では万物がかたく凍る一方で、地中の泉がゆるやかに融けて動きはじめるといいます。極寒の中で春を待ちわびる人の心を思わせる言葉。凛とした空気の中で咲き、甘い香りを漂わせる蝋梅の花に通じるものを感じます。

撮影「Takashi Maki」
この頃、日本各地では左義長、とんど焼きと呼ばれる小正月の行事が地区ごとに行われます。門松や注連飾りを焚き上げるもので、この炎にかざして焼いた餅を食べれば向こう一年を無病息災で過ごせるとも。
末候は「雉始雊(きじはじめてなく)」1月16日~19日。ピンと張った冬の空気を割いて、キジの甲高い声が響きます。寒さはいよいよピークへ。季節は「大寒」へと進みます。
「小寒」のごちそう かきもち
松の内も明けて歳神さまを送ったら、鏡餅を神棚から下げて皆でいただきます。これが「鏡開き」の行事。鏡餅に宿る歳神さまの力を分け合い無病息災を祈ります。
ここで注意すべきは、鏡餅を小さくするのに刃物は使わないこと。昔の人は縁起を担いで、切腹を連想させる刃物を避けたのでしょう。木槌を使って小さく分けます。
定番のぜんざいやきな粉餅も美味しいものですが、オススメはシンプルなかきもち。一口大にしたら160度ほどの油で素揚げしましょう。揚げたてに塩や醤油をまぶすだけで、香ばしいご馳走に! 小さなかけらまで余すことなく、歳神さまの力をいただけます。
二十四節気「大寒」1月20日~2月2日
冬の最後、寒さ極まる「大寒」。一年のうちで最低気温が観測されるのがこの頃。江戸時代、天明年間に出版された「暦便覧」にも「冷ゆることの至りて甚だしきときなれば也」と記されています。
しかし、この厳しい寒さあってこそ成り立つ美味もあるのです。気温が低く雑菌が繁殖しにくいことからこの時期に行われる酒や味噌の仕込み、氷点下の気温が生み出す凍り豆腐や寒天がそれに当たります。
初候は「欸冬華(ふきのはなさく)」1月20日~24日。フキノトウが冷たい雪を割って顔を出す頃。寒さの中にも、ほんの少しだけ春の気配が芽生えてきます。
1月20日は「二十日正月」とも呼ばれ、古くは正月の祝い納めの日とされて、邪気を払う小豆の粥を食べたり、正月に身を食べ尽くしたブリやサケの骨や頭を大根などの野菜と炊いて食べたとか。そこで「二十日正月」は「骨正月」とも「頭正月」とも呼ばれたのです。

撮影「Takashi Maki」
次候は「水沢腹堅(さわみずこおりつめる)」1月25日~29日。流れ降る沢にさえ氷が厚く張る寒さが訪れます。冬と春がせめぎ合う「三寒四温」を繰り返し、春がゆっくり近づいてきます。
末候は「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)」1月25日~2月2日。寒さはまだまだ厳しいものの、日照時間が目に見えて長くなってくる頃。近づきつつある春の気配を感じて、ニワトリが鳥屋に入り卵を産みはじめます。
そして立春前日2月2日、この日をもって暦の冬は終わりを迎えます。新たなシーズンを前に厄を祓い邪気を遠ざけるのが節分です。
もともと「節分」は雑節のひとつで、古くは立春、立夏、立秋、立冬それぞれの前日が冊分とされていました。それが江戸時代以降、主に立春前日の節分を指すようになったと言います。
この日は破邪の力をもつ豆をまいて鬼を追い出す豆まきが日本各地で行われます。
「大寒」のごちそう 福豆ごはん
厄除けや無病息災の祈りを込めた節分の炒り大豆を炊き込みごはんに。
作り方はごく簡単。節分の豆をフライパンで軽く炒ってから、普段より少しだけ水を多めにして、お米と一緒に炊き込むだけ。香ばしい福豆ごはんができあがります。
昆布1片と梅干し1~2個を一緒に炊き込むと、風味がアップ。豆と昆布、梅干の旨味のおかげで食欲も倍増です。
好きが高じて食をテーマに20余年、食べては書く日々を送るライター・エディター。