稲穂が膨らみゆく文月「二十四節気七十二侯」7月の暦

稲穂が膨らみゆく文月「二十四節気七十二侯」7月の暦

ついこの間、梅雨に入ったと思ったのに気がつけばもう7月。今年の梅雨明けは平年よりも少し早く、しかも梅雨明け早々から猛暑になる模様。新型コロナウィルスの感染もまだまだ油断ならない状況下で迎える今年の夏は、今までにない心構えを求められそうです。 とはいえ、人間社会がどんな状況にあろうとも季節は移り、自然も営みを止めることはありません。古くから農事や暮らしの目安とされてきた暦「二十四節気七十二侯」に親しんで、この夏を充実したものにしていきましょう。


撮影「Takashi Maki」

梅雨明けの眩しい太陽に照らされた田んぼが青々と美しい季節。初夏に植えた苗は順調に分けつして太くなり、田植えの頃に感じた頼りなさを思い出せないほど。茎の中では稲穂が育ち始めます。

撮影「Takashi Maki」

7月の別名は文月。短冊に歌や願い事を書いて書の上達を祈る七夕にちなんで名付けられたと言われますが、一説によれば、稲穂が膨らむ月「穂含月(ほふくみづき)」が転化したとも。

二十四節気「小暑」7月7日~22日

7月に入って続いていた梅雨終盤の強い雨が治れば、もう梅雨明け間近。「小暑」ともなると、陽射しが強くなり気温も上がる一方。青い空に入道雲が湧き、光と影のコントラストがくっきり明確になり、すべての色が鮮やかに。本格的な夏へと踏み出します。

撮影「Takashi Maki」


初候は「温風至(あつかぜいたる)7月7日~11日」。次候は「蓮始開(はすはじめてひらく)7月12日~16日」。続く末候は「鷹乃学習(たかすなわちがくしゅうす)7月17日~22日」。
吹く風に爽やかさが感じられず、むうっとした熱風に変わる頃、鎮守の森ではセミが鳴き始め、蓮の花も見頃に。例年ならば、京都の祇園祭をはじめとした夏祭りが賑やかに行われる頃ですが、今年は三密を避けるため神事のみとする寺社が多い模様。新型コロナウィルス感染が終息し、いつも通りの賑やかなお祭りの復活を祈るばかりです。

撮影「Takashi Maki」

この頃になると、市場には赤紫蘇が出回ります。梅雨に下漬けした梅を赤紫蘇漬けにするために重宝されますが、余力があれば美味しい紫蘇シロップ作りはいかがでしょう。
材料は赤紫蘇と砂糖、レモンジュースだけ。赤紫蘇の葉を摘んでよく洗い、沸騰したお湯で煮出します。その汁に砂糖とレモンジュースを入れると鮮やかな紅色に。冷たい炭酸や氷で割れば、紫蘇の風味と酸味が爽やかなドリンクの出来上がり。暑気払いにもってこいです。

撮影「Takashi Maki」

「小暑」のごちそう

トマトにナス、シシトウにミョウガ。露地物の夏野菜がおいしくなる頃。しかし急な暑さに食欲は減る一方…。そんな時に食べたいのが、冷汁です。
もとは宮崎の郷土料理で、アジなどの青魚を焼いてほぐし味噌と合わせてから出汁でのばした汁物。キュウリや大葉、豆腐を加え、ご飯にかけていただきます。
我が家では夏になると、この簡単バージョンが登場。魚は使わずに出汁を濃いめに引いて、トマトやナス、ミョウガも具に加えます。野菜たっぷりオリジナルの冷汁なら夏バテでもスルスルといただけるのです。

二十四節気「大暑」7月23日~8月6日

田植えから約2ヶ月。大暑を迎える頃、田んぼにはトンぼが飛び交い、稲が小さな花を咲かせます。

撮影「Takashi Maki」

稲は成長とともに茎の中で穂を育てます。やがて幼い穂が顔を出し、穂の先に白い花が咲き始めます。ひとつの花が咲いている時間は、わずか1~2時間ほど。短い時間に受粉を終えて、実りの秋を待つのです。

大暑の初候は「桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)7月23日~7月26日」。次候は「土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)7月28日~8月1日」。末候は「大雨時行(たいうときどきふる)8月2日~8月6日」。

この頃には暑さもピーク。暑さも湿度も我慢できないレベルに。エアコンや扇風機を使っての室温コントロールはもちろんですが、打ち水や風鈴、すだれやよしずなど昔ながらの知恵も駆使して、少しでも暑さをしのぎましょう。
打ち水は気化熱によって地面の熱を逃がすので、体感温度が2℃ほど下がるという実験結果も。ただし狙い通りの効果を上げるためには時間帯を選ぶこと。気温が上がる前の朝や、気温が下がり始める夕方が効果的です。

雑節「土用」7月27日

雑節の「土用」ともなれば「うなぎ」の文字が市中に踊ります。現代では、土用丑の日と言えばうなぎを食べるものと決まっていますが、実はコレ江戸時代に始まったお話。
そもそも土用は立春、立夏、立秋、立冬直前の18日間を指す言葉。だから少なくとも年に4回は土用は巡ってくるわけです。そして、土用の期間に巡ってくる丑の日を土用の丑の日と言います。
それぞれ季節の変わり目で体調を崩しやすい時期なので養生しようという知恵から、薬草入りの風呂に入ったり、灸を据えたりする習わしが生まれました。食養生も、そのひとつ。江戸時代にうなぎが登場するまでは、夏の土用丑の日に食べるものといえば瓜、梅干し、うどん。みずみずしさや酸味、喉越しの良いものならば、夏バテで食欲がないときも食べられるということなのでしょう。

撮影「Takashi Maki」

夏の土用は晴天が続くと言われ、梅雨時に下漬けして小暑の頃に赤紫蘇漬けした梅干しを干すのに良いタイミング。ザル一杯に広げた梅が太陽の熱を帯びてほんのり温まり、味わいを増していくのを見るのは楽しいものです。

撮影「Takashi Maki」

「土用」のごちそう 梅の炊き込みごはん

今年の夏、土用丑の日は7月21日と8月2日の2回。一方はうなぎを楽しむとして、もう一方は昔ながらに梅を食べるのはいかがでしょう。
お薦めはシンプルに梅干しと梅酢で炊いたごはん。ほんのり酸味があり、さっぱりとした口当たりで食欲のない時も意外に口にできます。
我が家では梅干しを漬けた時にできる梅酢を利用。普通に白米を炊くときと同じ段取りで、水に梅酢を混ぜお米の上に梅干しをのせるだけ。炊き上がったら梅干しの種を取り除き、梅肉をほぐして混ぜ込みます。
梅に含まれるクエン酸には殺菌効果もあり痛みにくいのでお弁当にもオススメ。クエン酸には疲れをとる働きもあるので夏バテ気味の体にはピッタリです。

この記事のライター

好きが高じて食をテーマに20余年、食べては書く日々を送るライター・エディター。

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