水無月「二十四節気七十二侯」6月の暦

水無月「二十四節気七十二侯」6月の暦

木々の緑がますます深くなり、春先に花を咲かせた梅が青々とした実をつける頃となりました。新型コロナウィルスへの感染はまだまだ油断がならない状況ですが、さまざまな対策をとりながら外出自粛などを段階的に緩和する動きが現れてきました。 どんな大変な状況下でも、自然の営みはたゆむことなく季節も動きを止めることはありません。移りゆく季節と人の暮らしの目安となる暦「二十四節気七十二侯」を知って、今この一瞬を見逃さず日々を大切に暮らしていきましょう。


撮影「Takashi Maki」

水の無い月と書いて「みなづき」。しかし実は「無」は当て字で、本来は水の月であることを意味する「水な月」だとも。旧暦6月が田んぼに水を引く時期であることから「水な月」と呼ばれるようになったといいます。

撮影「Takashi Maki」

かと思えば真逆の説もあります。田んぼに水を引くため、田んぼの他で水がなくなってしまうから、水が無い「水無月」なのだとも。
他にも田んぼに水を張る季節だから「水張月」、雨を降らせ田畑を潤す雷が多いことから「鳴神月」といった異名あり。いずれにしろ農事、特に田んぼ仕事にとって大切なシーズンであることは、今も昔も変わりがありません。

二十四節気「芒種」6月5日~20日

「芒種」の「芒」は訓読みで「のぎ」。稲や麦の先にあるトゲのような部分を指す言葉です。麦の刈り入れが終わり、田植えが忙しくなる頃。梅雨入りを前に、農家が最も忙しくなる季節です。
植えたばかりの若々しい苗がそよぐ田んぼは、まるで水鏡のよう。空を映し、月を映しながら、恵みの目が注ぐのを待っています。

初候は「蟷螂生(かまきりしょうず)6月5~9日」。次候は「腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)6月10日~15日)」。続く末候は「梅子黄(うめのみきばむ)6月16日~20日」。
立春から数えて135日めの6月10日は雑節のひとつ「入梅」。暦の上では梅雨に入ります。このころになると梅の実が立派に実り、スーパーや八百屋の店頭に並び始めます。

青い梅は梅酒や梅シロップに、ザルに並べて黄色く追熟させた梅は梅干しに。年に一度の梅仕事は、手間がかかるけれどもこの季節ならではのお楽しみ。梅仕事は夏を迎える心の準備ともいえるでしょう。

撮影「Takashi Maki」

紫陽花の花が色づき始めると梅雨も本番。この時期、雨上がりのムシムシと湿度が高く風のない夜にホタルが羽化。淡い光を放って飛び交います。水のきれいな田んぼや清流がホタルの生息域。おだやかな里山の景色が広がる場所は、人間にとってもホタルにとっても今や貴重な場所と言えるでしょう。

撮影「Takashi Maki」

「芒種」のごちそう 丸ごとトマトごはん

この時期になると露地栽培のトマトが美味しさを増してきます。熟れたトマトは旨味も甘みもたっぷり。そのまま生で食べても、もちろん美味しいのですが、お米と一緒に丸ごと炊いても美味しいごはんに。
作り方は実にシンプルです。お米を炊くときに、炊飯器や土鍋の中にヘタを取り除いたトマトをポンと入れるだけ。
上手に作るコツは、トマトから水分が出る分、水をやや少なめにすること。炊き上がりにトマトをつぶしてオリーブオイルをかけ回し、塩少々で味を調えてざっくり混ぜ合わせれば完成です。

二十四節気「夏至」6月21日~7月6日

6月21日夏至、一年で昼の時間が一番長い日がやってきました。この日、ヨーロッパ各地では盛大に夏至祭が行われますが、実は日本でも三重県伊勢市の二見浦で夏至祭が行われています。これは夏至の日の早暁、沖に浮かぶ夫婦岩の間から上がる朝日を拝し禊を行うもの。今年は残念ながら禊行事は中止となりましたが、いつか荘厳な光景を眺めに出かけたいものです。

夏至の初候は「乃東枯(なつかれくさかるる)6月21日~25日」。次候は「菖蒲華咲(あやめはなさく)6月26日~30日)」。末候は「半夏生(はんげしょうず)7月1日~7月6日」。

撮影「Takashi Maki」

6月30日は1年の折り返し地点です。この日は各地で夏越の祓が執り行われ、茅の輪くぐりが行われます。茅の輪とは茅で編んだ大きな輪のこと。参道や鳥居に設けられた茅の輪を八の字を描くように3回くぐり、半年の間に溜まった穢れや災厄を祓い、残る半年の無病息災を祈ります。
この頃になると日に日に蒸し暑さが増していきます。間もなく梅雨が明け猛暑の夏が来る前に心機一転。夏にもコロナウィルスにも負けないよう、心も体も整えましょう。

この夏越の祓に合わせ、2015年に制定されたのが「夏越ごはんの日」です。夏越ごはんは茅の輪を疫病よけの印とした蘇民将来の言い伝えにちなんだもの。
貧しい蘇民将来が粟飯で神をもてなしたエピソードにちなんだ粟や古来より邪気を払うとされる豆が入った雑穀ごはんに、茅の輪をイメージした丸い夏野菜かき揚げを乗せたメニューです。昨年は飲食店のほか、コンビニや百貨店でも取り扱いがあったので見かけたことがある人も多いかも。今年はどんな夏越ごはんが登場するか、楽しみですね。

続く7月1日は雑節の「半夏生」。夏至から数えておおよそ11日め、古くから田植えを終える目安とされてきた日です。どんなに天候不順でも半夏生を過ぎたら田植えはするなと戒められました。
「半夏生」の半夏はカラスビシャクという植物の生薬名。この草が生える時期は梅雨も折り返しを過ぎ、ムシムシと息苦しいような天候。カビや雑菌が繁殖しやすい時期でもあります。そのせいでしょうか、七十二侯の半夏生に当たる5日間は天から毒が降ると言い伝えられ、井戸に蓋をして働くことも忌むべしとする土地もあったとか。

その一方では田植えを無事に終えたことを田の神に感謝し、麦餅や団子をこしらえて祝ったとも。地方によっては焼き鯖やうどんなどお供えは多岐にわたりますが、田植えを終えてホッと一息つきつつ、植えたばかりの稲に降り注ぐ半夏雨を眺めながら豊作を祈る気持ちはどこの土地でも同じだったに違いありません。

「夏至」のごちそう たこめし

関西では、夏至の末候「半夏生」にタコを食べる習わしがあります。これは田んぼに植えた苗が、タコ足のように八方に根を広げ、吸盤のようにしっかりと大地根付くよう縁起を担いだもの。
この時期に旬を迎えるタコはおいしいだけでなく栄養もたっぷり。高タンパク質なのに低カロリー、しかもビタミンやミネラル豊富。疲労回復も期待できます。だからこそ昔の人は田植えで疲れた体を癒すために、半夏生にタコを食べたのかもしれません。
材料は茹でダコとお米とショウガ。食べやすい大きさにぶつ切りした茹でダコと千切りのショウガ、日本酒を合わせた出汁で炊くだけ。市販の白ダシを使えばグッと簡単。タコからもたっぷりダシが出るので、おかずいらずの旨味豊かなごはんができあがります!

この記事のライター

好きが高じて食をテーマに20余年、食べては書く日々を送るライター・エディター。

関連する投稿


秋深まる神無月「二十四節気七十二侯」神無月の暦

秋深まる神無月「二十四節気七十二侯」神無月の暦

10月の声を聞くと同時に、季節は一気に秋へと加速。朝晩は肌寒さを感じるほどになりました。ついこの間まで青々としていた田んぼが黄金色に色づき、あちこちで稲刈りが始まります。実りの季節を経て季節が冬へと移り行くのを肌で感じる頃、自然と共に生きる智恵が詰まった「二十四節気七十二侯」を目安に、地に足をつけて日々を暮らしていきましょう。


秋の足音を聞く長月「二十四節気七十二侯」9月の暦

秋の足音を聞く長月「二十四節気七十二侯」9月の暦

今年の残暑の厳しさは、今までに経験したことがないほど。熱中症対策をとりながら過ごす9月となっています。しかし、心を鎮めて周囲の自然に気持ちを向けてみると、ひと筋ふた筋と秋の気配が漂い始めています。日本人が古くから親しんできた農事と暮らしの暦「二十四節気七十二侯」をひとつの目安に、実りの季節へ移りゆく9月を大切に過ごしましょう。


葉月「二十四節気七十二侯」8月の暦

葉月「二十四節気七十二侯」8月の暦

例年にないほど長い梅雨がようやく開けた途端、文字通りうだるような暑さに見舞われた今年の8月。熱中症防止と新型コロナウィルス感染防止、両方の対策を講じながら過ごす夏は、特別なものになりそうです。 そんな中でも自然の営みはたゆむことなく、季節も足を止めることはありません。古くから日本人が親しんできた農事と暮らしの暦「二十四節気七十二校」を目安に、移りゆく季節を感じながら過ごしましょう。


稲穂が膨らみゆく文月「二十四節気七十二侯」7月の暦

稲穂が膨らみゆく文月「二十四節気七十二侯」7月の暦

ついこの間、梅雨に入ったと思ったのに気がつけばもう7月。今年の梅雨明けは平年よりも少し早く、しかも梅雨明け早々から猛暑になる模様。新型コロナウィルスの感染もまだまだ油断ならない状況下で迎える今年の夏は、今までにない心構えを求められそうです。 とはいえ、人間社会がどんな状況にあろうとも季節は移り、自然も営みを止めることはありません。古くから農事や暮らしの目安とされてきた暦「二十四節気七十二侯」に親しんで、この夏を充実したものにしていきましょう。


【お米クイズ】第95回:稲穂の成長と田んぼの様子

【お米クイズ】第95回:稲穂の成長と田んぼの様子

「これは知ってほしい!」五ツ星お米マイスター・小池 理雄が、皆さんへお米のトリビアを毎回楽しくお届けする「お米クイズ」。 第95回は稲穂の成長と田んぼの様子の時期についてです。


最新の投稿


【新潟デザイン専門学校】新潟県出雲崎町の新たなブランド米「出雲崎の輝き」のパッケージデザインを制作

【新潟デザイン専門学校】新潟県出雲崎町の新たなブランド米「出雲崎の輝き」のパッケージデザインを制作

NSGグループの新潟デザイン専門学校の学生が、この度 出雲崎町が10月に販売を始める町内産コシヒカリの独自ブランド米「出雲崎の輝き」のパッケージデザインを制作しました。


秋深まる神無月「二十四節気七十二侯」神無月の暦

秋深まる神無月「二十四節気七十二侯」神無月の暦

10月の声を聞くと同時に、季節は一気に秋へと加速。朝晩は肌寒さを感じるほどになりました。ついこの間まで青々としていた田んぼが黄金色に色づき、あちこちで稲刈りが始まります。実りの季節を経て季節が冬へと移り行くのを肌で感じる頃、自然と共に生きる智恵が詰まった「二十四節気七十二侯」を目安に、地に足をつけて日々を暮らしていきましょう。


石井食品×千葉ジェッツ『2021千葉ジェッツお正月料理』を数量限定で10月1日より予約販売開始!!

石井食品×千葉ジェッツ『2021千葉ジェッツお正月料理』を数量限定で10月1日より予約販売開始!!

無添加調理※による加工食品の製造販売を展開する石井食品株式会社は、昨年に引き続き、バスケットボールB.LEAGUEに所属する「千葉ジェッツふなばし」を運営する株式会社千葉ジェッツふなばしの2020-21シーズンオフィシャルパートナーとなりました。 新しい生活様式に寄り添って装いも新たに開発した『千葉ジェッツお正月料理』を千葉ジェッツのオフィシャルオンラインショップにて10月1日(木)より予約を開始します。(※)製造過程においては食品添加物を使用していません。


10月16日(金)より、AKOMEYA TOKYOの「新米祭り」開催。今年のテーマは「お米を極める」!

10月16日(金)より、AKOMEYA TOKYOの「新米祭り」開催。今年のテーマは「お米を極める」!

今年もやってきた新米の季節!10月16日(金)より、AKOMEYA TOKYOの「新米祭り」が開催します。「一杯の炊きたてのごはんからつながり広がる幸せ」をテーマに、全国から美味しいお米が20種類以上も届きました。


【お米クイズ】第109回:お米袋の表示

【お米クイズ】第109回:お米袋の表示

「これは知ってほしい!」五ツ星お米マイスター・小池 理雄が、皆さんへお米のトリビアを毎回楽しくお届けする「お米クイズ」。 第109回はお米袋の表示についてです。