爽やかに風薫る皐月「二十四節気七十二侯」5月の暦

爽やかに風薫る皐月「二十四節気七十二侯」5月の暦

山は新緑に輝き、薫風吹き渡る五月。新型コロナウイルスの感染拡大は未だ先の見えない状況ではありますが、そんな時でもいつもと変わりなく季節はめぐってきます。「ステイホーム」が必要な今だからこそ、身近な自然や季節の小さな変化を感じながら暮らしてみませんか。 そんな暮らしの目安となるのが「二十四節気七十二侯」。古代中国から日本に伝わり長らく親しまれてきた暦を知って、家で過ごす時間をもっと心豊かなものにしていきましょう。


花は咲き緑は芽生え、吹く風はさわやか。一年で一番心地よい季節がやってきました。5月の別名は皐月。「皐」は神に捧げる稲の意味。早苗を植える月「早苗月」が略されて「さつき」になったという説もあります。

「早苗月」の別名の通り、5月に入ると本格的な田植えのシーズンに。兼業農家が多い現代、ゴールデンウィークで田植えの人手が確保できるという事情も手伝ってのことなのかもしれません。機械を使っての田植えとはいえ、田んぼ一枚一枚に苗を植える姿には頭が下がります。

撮影「Takashi Maki」

秋の稲刈りと並び、稲作農家が最も忙しくなる時期。気候の安定と豊作を願わずにおれません。全国各地に伝わる田植え祭りには、先祖代々昔から変わらぬ祈りの気持ちが込められているのでしょう。手甲脚絆に菅笠姿で早苗を手植えする姿は、見る者の気持ちを揺り動かします。

二十四節気「立夏」5月5日~19日

暦の上ではこの日から夏。まさにこの時期の季語「緑滴る」の言葉通り、山の緑は日に日に勢いを増していきます。
初候は「蛙始鳴(かわずはじめてなく)5月5日~9日」。次候は「蚯蚓出(みみず出る)5月10日~14日)」。続く末候は「竹笋生(たけのこしょうず)5月15~19日」。万物の命が輝く季節です。

撮影「Takashi Maki」

5月5日は端午の節句。古くは邪気や災厄を払う行事が行われた日。菖蒲や蓬といった香りの強い薬草を摘み、薬玉にして贈りあったり、菖蒲を蓬とともに軒にさしたり、薬湯を使って災厄を払ったと言われます。

撮影「Takashi Maki」

これが男子の誕生と前途を祝す日となったのは、武士の世になってから。菖蒲が「尚武」「勝負」に通じることから武家にとって大切な節日となりました。江戸時代には幕府の重要な式日と定められます。これがやがて庶民にも広まって、玄関前に吹流しや鯉のぼりを飾るようになったというわけです。
五月の風に吹かれて鯉のぼりが勇壮に泳ぐ姿は、実に爽快です。しかし、こんな季節の変わり目こそ体調の変化には要注意。菖蒲湯にゆっくり浸かり、身体をいたわることが大切です。

そして5月といえば「目に青葉、山ほととぎす、初鰹」。江戸時代の俳人、山口素堂が詠んだ一句が思い出されます。青葉が目にまぶしく、山にはホトトギスの声が響き、今年初物のカツオが江戸市中に出回る頃。初鰹は江戸っ子にとって粋の証。庶民には簡単に手が出せない高値がつきましたが「女房を質に置いてでも食え」と言われるほど人気があったと言います。

今も、黒潮に乗って太平洋を北上する初鰹は初夏のごちそう。身がしまって脂が強すぎず、さっぱりといただけます。タタキにしてたっぷりの薬味でいただくと、ごはんもお酒も進みます。
カツオは「勝つ男」にも通じ、端午の節句にもぴったり。身を漬けにして酢飯や炒りごまと合わせ、大葉や生姜、ネギなどの薬味を散らした手ごね寿司もおすすめです。

「立夏」のごちそう 名残のフキとタケノコのちらし寿司

この頃になると、市場に出回っていたフキも茎が太くしっかりしたものに。そろそろ名残の時期を迎えます。これを色よく青煮にして、やはり名残の時期のタケノコとちらし寿司に。
フキは塩で板ずりしてから茹でるときれいな若緑に煮あがります。水にさらして皮を取り、薄味に整えた熱々の出汁に浸して冷めるまで待てば、青煮のできあがりです。
酢飯にタケノコやニンジン、キュウリの細切りと、さっくり混ぜ合わせましょう。ツナやハムを加えれば、子どもたちも喜ぶ味わいに。さっぱりしたちらし寿司は初夏にもってこいのごちそうです。

撮影「Takashi Maki」

二十四節気「小満」5月20日~6月4日

昼間の気温はぐんぐん上昇し、緑も一段と勢いを増してきます。太陽の光を浴びて、虫も魚も草木もあらゆる命が満ち満ちていく頃。万物が勢いよく成長していく季節です。田植えを終えたたんぼでは、早苗が日一日成長し、風に揺れています。

撮影「Takashi Maki」

小満の初候は「蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)5月20日~25日」。蚕が桑の葉を食べて成長する頃。日本では古くから絹糸の原料を生む蚕は農家にとって大切な存在。暦の上でも、この時期は大切な時期であったわけです。

撮影「Takashi Maki」

次候は「紅花栄(べにばなさかう)5月26日~30日)」。紅花から生まれる深い紅色は、古くは高貴な身分の人物だけが身につけられる色とされました。
絹2反を染めるためには約12kgもの紅花が必要で、しかも深い色に染めるためには何度も染めを繰り返さなくてはなりません。紅花の栽培が盛んになる江戸時代になっても、「紅一匁金一匁」と言われるほど大変高価なものだったとか。

続く末候は「麦秋至(むぎのときいたる)5月31日~6月4日」。冬に播いた麦が熟し金色の穂をつける頃。麦秋とも呼ばれます。この時期、麦畑を吹き渡る風は麦嵐、降る雨は麦雨と呼ばれています。

この頃、合鴨農法の田んぼではそろそろヒナの放鳥が行われます。まだ若い稲の間を雛鳥が元気に泳ぎ回って、雑草の根を浮き上がらせ、旺盛な食欲で虫を退治していきます。農薬に頼らない米づくりは、安心安全な食を実現するとともに懐かしい里山の自然を守ることにも大いに役立っているのです。

「小満」のごちそう そら豆のリゾット

初夏の声を聞いて、いよいよ露地のそら豆が出まわる季節。さやが鮮やかな緑色でツヤがあり、ふっくらと弾力のあるものを選びましょう。そら豆はさやのまま焼いてよし茹でてよし、かき揚げにしてよし。何をやってもおいしいものですが、相性の良いチーズと一緒にリゾットもおすすめ。
生米をオリーブオイルで炒め、米が透き通ってきたらそら豆とコンソメスープを加え、焦げないように時々かき混ぜながら煮ます。米にやや芯が残るくらいに煮えたらバターとパルメザンチーズを加えてツヤが出たら完成。
仕上げにパルメザンチーズをさらにひと振り。そら豆の鮮やかな緑が美しい一品になります。

撮影「Takashi Maki」

撮影「Takashi Maki」

この記事のライター

好きが高じて食をテーマに20余年、食べては書く日々を送るライター・エディター。

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