寒さの中にも春のきざし「二十四節気七十二侯」2月の暦

寒さの中にも春のきざし「二十四節気七十二侯」2月の暦

暮らしの中で季節を感じる指標「二十四節気七十二侯」。古代中国で考え出されて日本に取り入れられて、米作りをはじめとする農業の目安にもなり、日本人の暮らしに欠かせないものに。そして長い年月を経て、日本の気候風土に馴染んできました。「二十四節気七十二侯」を知って、季節の移ろいを感じ取り、心豊かな暮らしを送りましょう。


撮影「Takashi Maki」

二十四節気「立春」2月4日~2月18日

立春2月4日は二十四節気のはじまりの節気。八十八夜、二百十日、二百二十日など、季節や農作業の節目も、立春を起点に勘定されています。
この日から暦の上では春。まだまだ寒さは厳しく北国や雪国では雪の日が続きますが、日ごとに日が長くなり日差しは明るく暖かに。梅の花もほころび、寒さの中にも徐々に近づきつつある春の気配が感じられます。

古くから立春の早朝に汲む水は邪気をはらうとされ、この水で立てた福茶をいただいて、向こう1年の無病息災を祈りました。また立春の早朝に搾り上げて蔵出しした新酒は福を呼ぶ「立春朝搾り」として喜ばれました。立春の朝にこしらえた和菓子も縁起が良いとされ、伊勢の〈赤福〉では「立春大吉餅」として黒大豆と大豆を使った2種類の大福が売り出され、人気を博しています。

初候は「東風解凍(はるかぜこおりをとく)2月4日~2月8日」。「東風」は春風を表す言葉で、優れた歌人としても知られる菅原道真が詠んだ「東風吹かば匂いおこせよ梅の花 あるじなしとて春な忘れそ」の歌で広く知られます。

その春風が凍てついた川や湖の氷を解かしはじめるのが、この頃。雪解けの土の中からフキノトウも顔を出し、春の訪れを感じさせます。天ぷらによし蕗味噌にしてよし、刻んで、味噌汁の薬味にしてよし。みずみずしい香りと心地よいほろ苦さは、まさに春の味わいです。

撮影「Takashi Maki」

ただ、春の風は暖かく優しいばかりではありません。立春から春分までの期間にその年に初めて吹く南寄りの強い風を「春一番」と呼びますが、これはもともと漁師言葉が語源とも。船を転覆させるほどの突風を指したもので、荒天を警戒する言葉だったのです。
春一番が吹いた日は気温が上昇し、その翌日には寒さが戻ることが多く、これを「寒の戻り」と呼んでいます。

次候は「黄鶯睨睆(うぐいすなく)2月9日~13日)」。山里ではウグイスが鳴き始める頃。ウグイスの別名は「春告鳥」。日本では古くから、その年に初めてなくウグイスの声を「初音」と呼んで尊びました。

続く末候は「魚上氷 (うおこおりをいずる)2月14~18日」。日に日に暖かくなるとともに川や湖の氷も大きく割れ、その間から魚が飛び跳ねる頃。長野県や岐阜県では渓流釣りが解禁となり、ヤマメやイワナ釣りを楽しめるシーズンがはじまります。

撮影「Takashi Maki」

「初午」のごちそう

初午は立春を過ぎて最初に迎える午の日のこと。この日は京都の伏見稲荷神社を始めとする全国の稲荷社でお祭りが行われ、五穀豊穣や商売繁盛、家内安全を祈り人で賑わいます。

古くから、この日のごちそうとされてきたのが、神使の狐の好物であるいなり寿司。関東では俵型、関西では三角型が主流ですが、俵型のいなり寿司に好みの具材をトッピングした変わりいなり寿司もおすすめです。家族で楽しく作って美味しくいただきましょう!

撮影「Takashi Maki」

二十四節気「雨水」2月19日~3月4日

空から落ちる雪が雨に変わり、雪や氷がゆっくり溶け出して田畑を潤します。昔から、雨水は農作業の準備をはじめる目安。
凍てつき乾ききった大気と大地の中に、ふと感じられるしっとりとした水の気配。春はもうすぐそこです!

撮影「Takashi Maki」

初候は「土脉潤起 (つちのしょううるおいおこる)2月19日~23日」。
春のあたたかい雨が大地に潤いをもたらし、冬眠していた動物も目をさます頃。三寒四温の言葉通り、寒さと暖かさがせめぎあいつつ、徐々に寒さがゆるんできます。

撮影「Takashi Maki」

女の子のいる家庭では、そろそろひな飾りをはじめる頃。雨水の最初の日に雛人形を飾りつけると良縁に恵まれるとされています。まもなくやってくる3月3日の上巳の節句に向けて、家族で飾りつけをするのも楽しいものです。

女の子のいる家庭では、そろそろひな飾りをはじめる頃。雨水の最初の日に雛人形を飾りつけると良縁に恵まれるとされています。まもなくやってくる3月3日の上巳の節句に向けて、家族で飾りつけをするのも楽しいものです。

次候は「霞始靆(かすみはじめてたなびく)2月24日~28日」。冬の間、張り詰めていた空気が潤み、遠くの野山がぼんやりと霞んで見えるように。「霞」は春の季語とされ「春霞」「遠霞」「霞立つ」などが使われます。

末候は「草木萠動(そうもくめばえいずる)2月29日~3月4日」。春の日差しの中で草木の芽が顔を出し、大地や木々の枝先がほんのりと色づきはじめます。3月3日は上巳の節句。女の子の健やかな成長を祈るひな祭りの日です。
京都の下鴨神社では、この日に流し雛が行われます。これは素朴な雛人形を乗せた桟俵を境内の御手洗川に流す行事で、人形(ひとがた)に穢れを移して川に流した古式にのっとったもの。
また伊豆稲取をはじめとする各地では、つるし雛飾りのイベントも。色とりどりの布でこしらえられた縁起物が飾られ、華やかな雰囲気を醸し出します。邪を払う桃や福を授ける打ち出の小槌、福俵など、想いのこもった繊細な細工は実に印象的です。

「ひな祭り」のごちそう

3月3日、ひな祭りのごちそうといえば蛤のお吸い物でしょう。蛤はひな祭りや結婚式には欠かせない縁起物。蛤の二枚貝のようにぴったりと重なり合い、他に替えのきかない相手と巡り会い、添い遂げられるようにと言う願いが込められています。
この蛤のお吸い物+ちらし寿司が、ひな祭りの定番メニュー。ふっくら美味しいごはんを酢飯にして、煮た椎茸やニンジン、レンコンをさっくり混ぜ合わせ、彩りに錦糸卵やエンドウ豆、菜の花を飾れば出来上り。便利なちらし寿司の素を使えば、さらに手軽に作れます。
年に一度の桃の節句、美味しいごはんを囲んで家族でお祝いしてはいかがでしょうか。

この記事のライター

好きが高じて食をテーマに20余年、食べては書く日々を送るライター・エディター。

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