「二十四節気七十二侯」7月の暦

「二十四節気七十二侯」7月の暦

古代中国で考え出されて日本に取り入れられた、季節の指標「二十四節気七十二侯」。長い年月をかけて、日本の気候風土にフィットするよう調整され、日本人の暮らしに親しまれてきたもの。「二十四節気七十二侯」を知ることは、私たちの暮らしや食文化を育んできた日本の気候風土を知ることでもあります。


撮影「Takashi Maki」

今月、お届けするのは小暑から大暑にかけての1ヶ月「暑中」とされる期間。梅雨が明け、田んぼでは青い稲がグングンを伸び、農家にとっては田の草取りや害虫駆除などで目が回るほど忙しい季節でもあります。
暑中見舞いを出すのも、この期間。遠くに暮らすあの人や、日頃ご無沙汰続きなあの人に、便りを出してみませんか。

雑節「半夏生」7月2日

夏至から数えて11日目。長く続いた梅雨も最終コーナーにさしかかります。ちょうど「半夏」という薬草が茂る頃。「半夏」は、現在はハンゲショウと呼ばれています。その名の通り、葉の半分ほどが白く半分、化粧をしているようにも感じられます。

撮影「Takashi Maki」

昔から「半夏生」は田植えを終える目安とされました。田植えの疲れをねぎらい、田の神に感謝して豊作を祈る祭り「さなぶり」を行う土地も少なくありませんでした。

また、ちょうど麦の収穫機にあたることから、収穫した小麦で餅やうどんを作って田の神に備える地方も。また、関西ではこの日に蛸を食べる習慣があるとか。田んぼに植えた苗が、蛸の足のようにしっかり根を張るようにと験をかついだものでしょう。
この時期に降る、梅雨の終わりの大雨は「半夏雨」とも呼ばれます。

二十四節気「小暑」7月7日~7月22日

梅雨が明けて暑さが本格的になる頃。七十二侯は第三十一侯「温風至(あつかぜいたる)」(7月7日~11日)となります。温風とは梅雨明けに吹く南風。夏を運んできて、日に日にじりじりと暑さが増していきます。
続く第三十二侯は「蓮始開(はすはじめてひらく)7月12日~16日」。蓮が水の底から茎を伸ばして水面に蕾を浮かべ、水上に美しい花を咲かせます。
蓮の花が咲き始める頃。優美で清らかな蓮は、天上の花にたとえられています。
東北なら、秋田佐竹藩久保田城址の堀に咲く大賀ハスが見事。東京なら誰もが知る蓮の名所、不忍池へ。鎌倉の鶴岡八幡宮の源氏池と平家池、光明寺でも見ごろを迎えます。

撮影「Takashi Maki」

さらに第三十三侯は「鷹乃学習(たかすなわちがくしゅうす)7月17日~22日」。初夏に生まれた鷹の雛が、巣立ちを前に飛ぶことや狩りを覚える時期とされます。

撮影「Takashi Maki」

「小暑」のごはん トウモロコシの炊き込みごはん

この頃になると、スーパーや八百屋の店頭にどっさり並ぶのがトウモロコシ。粒のひとつひとつがツヤツヤに輝くトウモロコシは甘くみずみずしく、そのまま蒸してよし茹でてよし焼いてよし。香ばしいかき揚げも美味しいものです。
しかし、ここでお薦めしたいのはトウモロコシの炊き込みごはん。材料は生のトウモロコシとお米だけ。トウモロコシは実だけでなく芯も一緒に炊き込みます。トウモロコシの芯から美味しい出汁が出るので、昆布や鰹節など他の出汁を入れる必要がないのです。
炊き上がったら芯を取り出して、ごはんとトウモロコシの実をさっくり混ぜて出来上がり。湯気とともに甘い香りが立ち上ります。プチプチとした歯ごたえ、ほんのり自然な甘みに食欲倍増。米2合~3合に対してトウモロコシ1本のバランスならば、トウモロコシの旬を心ゆくまで味わえます。

撮影「Takashi Maki」

二十四節気「大暑(たいしょ)」7月23日~8月6日

二十四節気では夏の最後に当たるのが大暑。1年で最も暑さ厳しいシーズンの到来です。

七十二侯は第三十四侯「桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)7月23日~7月26日」。初夏に薄紫の美しい花を咲かせた桐が実を結び始める頃となります。防虫や防湿、対価性に優れた桐の木は、昔から桐箱や桐箪笥、下駄の材料路なり、日本人の暮らしに欠かせないものでした。かつては娘が生まれたら、その誕生を祝って桐の木を植え、嫁ぐ時に成長したきりの木を使ってタンスを誂えたものだと言います。今でも地方で屋敷に大きな桐の木が見られるのは、その名残なのでしょう。

撮影「Takashi Maki」

続く第三十五侯は土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)7月28日~8月1日。土が湿りを帯び、蒸し暑さが増す頃になります。

この時期にきになるのが熱中症です。気温だけでなく湿度が上がると熱中症のリスクは急上昇。外出時には日傘や帽子で日差しを避けること、熱気を逃がしやすい服装をすること、無理をせずこまめに休憩をとることを、普段から心がけましょう。エアコンや扇風機を上手に使うことも大切です。
また水分をこまめにとること、汗をかいて不足した塩分を補給することを忘れずに。特に水分は喉が渇いたと感じる前にとることが肝心です。
もしも暑さに負けて夏バテしたら、お米と麹からできた発酵食品、甘酒を。現代では冬の飲み物というイメージが強い甘酒ですが、実は江戸時代には夏バテ防止ドリンクとして親しまれていました。天然のブドウ糖、必須アミノ酸、ビタミンが豊富で、その威力は「飲む点滴」と言われるほど。
飲む前にほどよく冷やして生姜の絞り汁を加えれば、ひんやりさっぱり。レモンを絞っても、すっきりと美味しいものです。

撮影「Takashi Maki」

そして季節は「大暑」の終わり、第三十六侯「大雨時行(たいうときどきふる)8月2日~8月6日」へ移ります。ここでいう「大雨」は夕立のこと。入道雲がムクムクと一気に大きくなり、空が暗くなったかと思うとザッと降り出す雨。しかし雨はそれほど長い時間続かず、大地を潤した後は一気に晴れ上がって再び蝉が鳴き出します。

撮影「Takashi Maki」

この時期は、日本各地で夏祭りや花火大会が催される頃。青森のねぶた祭、秋田の竿燈まつり、山形の花笠まつり、仙台の七夕まつりが行われるのもこの頃。
「大暑」の侯が過ぎれば、もう立秋。暦の上ではもう秋です。去りゆく夏の気配を追いかけて、お祭りを楽しむ旅に出かけるのも良いでしょう。

撮影「Takashi Maki」

雑節「土用」7月27日

この日は「土用の丑の日」。「土用」は立春、立夏、立秋、立冬の直前、約18日間を指し、実は春夏秋冬季節の変わり目にそれぞれ「土用」があるのです。
このうち私たちにとって最も親しみ深いのが夏の「土用」でしょう。梅雨から夏へ体力を消耗し切って夏バテとなる人が多いのは今も昔も同じ。精のつくものを食べて暑気払いしよう!と「う」のつく食べ物を食べるのが習わしでした。それをヒントに、江戸時代の蘭学者にして発明家・平賀源内が鰻屋に頼まれて流行させたのが「うなぎ」です。

もともと源内の「うなぎ」以前、「う」のつく食べ物といえは「うどん」「梅干し」「瓜」。これは現代にも通用する食の智恵。食欲がないときでも喉越し良く食べられて消化の良い「うどん」、クエン酸の働きで夏バテから体を回復させる「梅干し」、水分たっぷりカリウム豊富で体にこもった熱を逃す「瓜」で、夏の疲れを一掃しましょう。

「土用」のごはん うなぎの薬味混ぜごはん

とはいえ「土用の丑の日」はうなぎを食べたい。でも、うな重は少々ヘビーだったり、高価だったり…。そんな時はうなぎの蒲焼を細切りにして、刻んだ大葉やミョウガ、生姜甘酢漬け、白ごまを炊き立てごはんに混ぜ込んでどうぞ。
こってり蒲焼も。これなら薬味の風味でさっぱりした印象に。使う蒲焼の量も少なくて済みますから、お財布にも優しい。炊き上がりのごはんに混ぜるだけだから簡単。小さな子どもと一緒に作るのも楽しいものです。

この記事のライター

好きが高じて食をテーマに20余年、食べては書く日々を送るライター・エディター。

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