日本の国菌「オリゼー」って? 和食をささえるふしぎなカビを探る児童向けノンフィクション、発売!

日本の国菌「オリゼー」って? 和食をささえるふしぎなカビを探る児童向けノンフィクション、発売!

「オリゼー」をご存じでしょうか?私たち日本人の暮らしにとても大切な「カビ」なのです。そんな楽しい児童向けノンフィクション『ふしぎなカビ オリゼー 千年の物語-和食をささえる微生物』が、株式会社岩崎書店から2018年10月26日に発売されました。


「国花」は桜、では「国菌」は?

日本を代表する花や鳥、「国花」や「国鳥」を知っている人は多いと思いますが、なんとその国の菌=「国菌」というのがあるのをご存知でしょうか?
「国を代表する菌」といっても、あまりピンとこないかもしれませんね。でも、理由を知ると納得すること間違いなしです。

日本の国菌は麹菌「オリゼー」 和食の調味料を作るもと

日本の国菌は「麹菌」(学名:アスペルギルス オリゼー)というカビの一種です。
カビ?と驚くかもしれませんが、和食に欠かせない醤油、味噌、日本酒、みりん、酢などは、すべてこの麹菌「オリゼー」を利用して作られています。

ユネスコ無形文化遺産にも登録された和食、その味のベースを支えているのが、世界中で日本にしか存在しない「オリゼー」。まさに「国を代表する菌」というわけです。

オリゼーの電子顕微鏡写真

日本人とオリゼーとの出会いは1000年以上前?

『ふしぎなカビ オリゼー』中面

オリゼーは、あらゆる微生物が存在するこの地球上で、日本にしか存在しません。一体どこからオリゼーはやってきたのでしょうか? そして、千年以上前の日本人は、どうやってオリゼーと出会ったのでしょうか。
本書では、オリゼーを扱う醤油屋さんや味噌屋さん、種麹を作るもやし屋さんなどを取材し、オリゼーのふしぎに迫ります。

日本最古の歴史書『古事記』には、ヤマタノオロチを「酒」で酔わせたエピソードがあり、神話時代から酒造りが行われていたことがわかります。また、8世紀の「播磨国風土記」には、「神様にお供えした蒸し米がぬれてカビがはえ、お酒になった」と記されています。文書記録に麹が登場するのは、これが一番古いそうなのですが、実際にはもっと古くから日本人に身近なものであり、生活に根ざしていたと考えられています。となると、少なくとも1300年以上前には出会っていたということになりますね。
顕微鏡もなく、微生物も知らなかった時代に、日本人がオリゼーの存在に気づき、使いこなしてきたとは驚きです。

オリゼーを守る真の立役者、「もやし屋さん」

オリゼーが1000年以上受け継がれてきた背景には「もやし屋さん」の存在があります。もやし屋さんとは、種麹を専門に作る会社のことです。『もやしもん』というマンガで、耳にした人もいるのではないでしょうか。

本書に登場する現代の「もやし屋さん」秋田今野商店(秋田県大仙市)には、約1200種類ものオリゼーとソーヤ*が保管されています。オリゼーとソーヤを組み合わせて、10000通りくらいの種麹を作ることができるのだそうです。全国の酒屋さんや醤油屋さん、味噌屋さんそれぞれに相性がいいものを選んで組み合わせ、提供しています。
*ソーヤとは、特に大豆のタンパク質を分解する力が強い種類の種麹。学名「アスペルギルス・ソーヤ」。

オリゼー(イラストは発酵デザイナの小倉ヒラク氏)

「もやし屋さん」のもう一つの重要な役割

種麹の専門家「もやし屋さん」には、もうひとつ重要な役割があります。それは顧客ごとの種麹の「保管」です。
それぞれの蔵で使っているオリゼーの種類と配合を詳細に記録し、種麹をマイナス85度の超低音冷凍庫(その名も「菌庫」)で保管。顧客の蔵に万一のことがあった場合、元となる種麹を用意して、再開を手助けするのです。

この本の中でも、東日本大震災で蔵が被災した秋田県湯沢市の味噌・醤油醸造元「石孫本店」、糸井川市大規模火災で蔵が消失した新潟県糸井川市の酒蔵「加賀の井酒造」が、どのようにして蔵を復活させたか、その復活にもやし屋さんの種麹がどのように関わったかが、詳しく紹介されています。

室町時代に職業として確立したもやし屋さんは、オリゼーを分散保管するなど、知恵を絞って、様々な災害からオリゼーを守り抜いてきました。そんなもやし屋さんも、現在、全国で10軒足らずしかありません。表に出ることは少ないけれど、和食の背骨のような存在、縁の下の力持ちです。

種麹を冷凍保存する「菌庫」

もやしのつくりかた

家で学校で、ふしぎなカビ「オリゼー」に思いをはせてみよう

日本のほとんどの調味料のもとになっている麹菌「オリゼー」。最近では、発酵食や塩麹、甘酒などのブームもありますから、さらに口にする機会は増えているのではないでしょうか。

小学校、中学校など教育現場でも、和食文化を次世代へ継承するための取り組みが進み、和食を学ぶ単元や調べ学習が増えています。醤油や味噌、酒といった和食をささえる調味料に興味をもったら、ぜひ本書を開いてみてください。麹菌「オリゼー」が日本の伝統食に深く関わっていることが、よくわかることでしょう。

日本人もオリゼーも、長い時間を命のバトンをつなぎながらともに生きてきました。そのふしぎを、今晩のお味噌汁を飲むとき、醤油をかけるとき、そっと思い出してみてください。
さあ、本書を片手にふしぎなカビ、オリゼーをめぐる旅に出てみませんか。

書籍情報

書名:『ふしぎなカビ オリゼー 千年の物語-和食をささえる微生物』
作者:竹内早希子
定価:本体1,300円+税
判型:A5判/112頁/ハードカバー
ISBN:978-4-265-08316-9
対象年齢:小学校中学年〜中学生
発売日:2018年10月26日
◎岩崎書店HP https://bit.ly/2JaCHzO
◎Amazon https://amzn.to/2AnMAHH

作者紹介

竹内早希子(たけうち・さきこ)
神奈川県出身。ノンフィクションライター。大学卒業後、有機農産物宅配会社入社、主に品質管理部門で勤務。ドキュメンタリー映画製作スタッフ、NPOスタッフを経て執筆活動をしている。著書に『奇跡の醤-陸前高田の老舗醤油蔵 八木澤商店 再生の物語』(祥伝社)がある。

◎取材協力
神奈川県小田原市浜町4-3-3
株式会社 秋田今野商店(秋田県大仙市)
有限会社 石孫本店(秋田県湯沢市)
株式会社 澤井醤油本店(京都府京都市)
加賀の井酒造株式会社(新潟県糸魚川市)
株式会社 菱六
日本薬科大学教授 北本勝ひこ

◎イラスト
小倉ヒラク(発酵デザイナー)

この記事のライター

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