幻のマツタケご飯:ごはんいろいろ、想いいろいろ。

幻のマツタケご飯:ごはんいろいろ、想いいろいろ。

今年は国産のマツタケが超不作らしい。それでなくても、庶民には手の届かない贅沢品になってしまったマツタケ。もう死ぬまでにマツタケご飯は食べられないかもしれない。マツタケよ、どこに行ってしまったのだ?


昔は踏みつぶすほど生えていたぞ。

父の実家は京都・丹波の山奥。春にはタケノコ、秋には栗とマツタケが採れる鄙びた田舎だった。僕が小学校の頃は、秋になると蒸気機関車に牽かれた山陰本線の列車に乗って、祖父の家に遊びに行った。お目当ては栗拾いとマツタケ狩り。

竹カゴを腰にぶら下げた祖父が、裏山に連れて行ってくれる。農道から少し山の斜面を登った辺りで、マツタケを探す。小学生の僕でもすぐに見つけられるほど、マツタケはたくさん生えていた。子供の僕は、笠の開いた大きなマツタケばかりを採ろうとする。すると、祖父は「大きいのは踏みつぶしとけ!来年の種まきや」と言う。マツタケを踏みつぶして、菌糸や胞子を山にばらまくわけだ。祖父の竹カゴの中を覗くと、笠が開く前の「ころ」と呼ばれる小さいサイズのマツタケばかりが入っている。ジャンボ・マッシュルームみたいなやつだ。笠が開いていないと、香りが飛んでいないから上等なのだ。一時間も山にいると、竹カゴはマツタケでいっぱいになった。持ち帰ったマツタケは、祖母が庭先で締めた鶏と一緒にすき焼き鍋に放り込まれ、僕らの胃袋に収まった。

たきぎと共に、マツタケは姿を消した。

あれから半世紀、丹波の山にはもうマツタケの姿はない。1961年には全国のマツタケ生産量は2000トンを超えていた。それが2016年にはわずか70トン足らず。京都府の生産量はたった200kgしかなかったという。それでも全国ベスト10に入る生産量なのだ。どうして、マツタケは山から消えてしまったのだろう。

亡くなる前の祖父に聞いた話では、赤松が生える里山の手入れをする人がいなくなって、山が荒れたことが最大の原因だという。昭和30年代の丹波ではまだプロパンガスが普及しておらず、台所にはかまどがあり、ほとんどの家ではお風呂は山で刈り取ったたきぎで沸かしていた。たきぎは里山の木々の下枝を刈り取ったものを使う。わざわざ山の手入れをするまでもなく、毎日の暮らしの中で里山は風通しの良い雑木林として保たれていた。
それがプロパンガスや灯油の普及によって、たきぎが使われなくなり下枝を払わなくなったので、マツタケの菌糸が繁殖するために必要な日当たりや風通しが悪くなって、次第にマツタケが採れなくなったというのだ。化石燃料がマツタケの生育環境を間接的に破壊したと言えるかもしれない。

幻のマツタケご飯よ、いずこ・・・・・。

秋には田舎から送られてきたマツタケが届かなくなったのはいつごろからだろう?
京都を離れ、東京に出てきてからは本場丹波のマツタケに出会う僥倖などまるでなかった。せいぜい築地の市場で中国産と知りつつ「土瓶蒸しじゃなくてマツタケご飯だから外国産でもいいよな」と自分を納得させて買うのが関の山。今年はその中国産すらあまりお目にかかれなかった。最近ではチベットやブータンで採れたマツタケが、姿形も国産に近いので珍重されるとか。空飛ぶマツタケじゃ、高いのも当たり前だ。

焼きマツタケや土瓶蒸しは、なんとなく料亭っぽい気取りが感じられるが、やっぱり一番食べたいのはお茶碗にてんこ盛りになったマツタケご飯だ。シイタケやエノキやシメジはあんなに安く手に入るのに、どうして同じキノコのマツタケだけが人工的に作れないんだろう。どうか、僕が生きている間にマツタケの人工培養に成功してほしい。シイタケ並みのお値段でスーパーにマツタケが並んでいる姿を見たい。そして腹いっぱいになるまで、マツタケご飯を食べるのだ。マツタケの人工培養に成功した人には、ノーベル農学賞をあげよう。幻のマツタケご飯を夢見る2017年の秋である。

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